ガツンとくる衝撃的私小説-西村賢太の『二度はゆけぬ町の地図』

小説・エッセイ

更新日:2011/10/20

二度はゆけぬ町の地図

ハード : PC/iPhone/iPad/Android 発売元 : KADOKAWA / 角川書店
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:BOOK☆WALKER
著者名:西村賢太 価格:441円

※最新の価格はストアでご確認ください。

■二度はゆけぬ町の地図/西村賢太/角川書店

日雇い仕事で生計を立てている17歳の貫多は、年を18歳と偽って酒屋の配達の仕事に就くが…「貧窶の沼」。バイト先の居酒屋の社員ともめて、暴行と公務執行妨害で留置場へ送られて…「春は青いバスに乗って」。親切だと思っていたアパートの大家は、家賃を滞納した途端、豹変した…「潰走」。新しく通い始めた銭湯で、腋臭のひどい男と出会う…「腋臭風呂」。

advertisement

短編が4本収録されているのですが、その中でも特に私の印象に残ったのは「貧窶の沼」です。
主人公の貫多がバイト先の酒屋の店主から小言を言われる場面があるんですけど、その時の貫多の返答がすごく印象的なんです。最初は敬語で話していたのに、だんだんタメ口になってきたかと思うと、ついには恐ろしい言葉まで出てきて…。読んでいるだけでハラハラしました。あと、恋人の悠美江に対する態度と言葉も…。貫多が悠美江にものすごい暴言をはく場面があるんですけど、不思議なもので、読んでいくうちになんだか自分が怒鳴られているような気分になってくるんですよね(笑)。

この作品を読んで真っ先に感じたことは、久々にガツンとくるような小説を読んだなぁ…ということです。頭を鈍器で殴られるような感じというか、心臓をガシッと鷲掴みにされるような感じというか…。

とにかく、ものすごく衝撃的でした。

ここのところ、小説はエンターテインメントを中心に読んでいたんです。純文学もあまり読んでなくて、特に私小説を読んだのは何年ぶりだろう…って感じだったので、余計に衝撃が大きかったのかもしれません。これからはこのような作品も、どんどん読んでいこうと思いました。


目次です。4作品収録されています

徐々に変わっていく言葉づかいにドキッとします

文字を横向きにするとこんな感じです

端末を縦向き、文字を縦書きにするとこんな感じです