不思議でシュールで思いっきりコケティッシュ 魅惑の宮崎夏次系の世界にゾッコン

公開日:2014/7/4

変身のニュース

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : 講談社
ジャンル:コミック 購入元:BookLive!
著者名:宮崎夏次系 価格:540円

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 シュールなコミックが好きです。ナンセンスなコミックも好きです。難解で知的な感じ、深みがありそうな感じの作品が好物です。読後、「文学的にすごい」とか好き勝手に評価したりします。おおむね、頭で楽しんでいるんですね。しかし、本作にはやられました。じつにシュールなのに、ナンセンスっぽいのに、すべてのコマに意味があって、しかも心にズキュンとくるんです。わけがわからないのに感動して泣きそうになった、というのは私だけではないはずです。

 さて、本作は9話で成る短篇集。どこかが欠けたさまざまな人間が、短い出来事を通してアッと変身を見せます。絵はか細い線ですっきりしており、かつ非常にコケティッシュ。それなのに、清涼感があります。スポーツをした後に飲む某清涼飲料水のようにゴクゴクいけます。

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 それでいて、物語はシリアスなのかギャグなのか。最後まで読んでもわかりませんが、まあそんな分別をする必要がないのだと思います。とにかく、不思議で不条理で独創的。丸ごと新しい。思春期の中学男女が、学校の真っ白な壁に書かれた「オッパイボイーン」という“ゲスな”ラクガキを消しながら距離を縮めます。「ちょっとお前 首 吊ってきて」と言われた若い社員は、長すぎる遺書を書いて自分の個性に目覚めます。遺書 長スギワロタ。

 各話の主人公は、過度に明るく光と影がパッキリと分かれている世界で、陰の自分と陽の自分をコロコロと見せながら、どちらにも落ち着かず、読者を不安にさせます。不安定で陰にも陽にも傾きやすいのは、成長という変身を間近に控えているからなのでは。だからこその未知数な期待値が、主人公たちの最大の魅力ではないでしょうか。そう考えると、一見わけのわからないシュールもナンセンスも、主人公たちの必然に思えてきます。…なんてよくわからない考察をしている時点で、すっかり本作の中毒にかかっているのでしょうか。

 これまでに読んだことがない感動と中毒症状を、どうぞ。


真っ白な壁に書かれたラクガキ【赤星くん】

女子といっしょに消す【赤星くん】

風呂場で彼女を思いながら、自分を見つめる【赤星くん】

不幸な自分。追い詰められて、せめて遺書を書くことに【昼休み】

遺書 長スギワロタ。これにはオモイッキリワロタ【昼休み】