『ゴジラ』映画の全貌を伝えるファンのためのデータ全集
更新日:2014/7/7
バナナ世代、マンゴー世代というものがあるならば、我々50代後半から60代前半はなんのかんのいっても「ゴジラ世代」といっていいのではないだろうか。などと誰も彼も仲間に道づれしなくとも、少なくともわたしは、ゴジラにはかなり肩入れしている。55年生まれのわたしは54年公開の最初の『ゴジラ』こそ見ていないものの、『キングコング対ゴジラ』より始まって、『モスラ』などの怪獣特撮作品のほとんどを、一旦停止されたゴジラ映画が復活した90年以降の第二期ゴジラまでも含めて、いい大人になってからがちゃんと映画館で見ているのである。
最初の『ゴジラ』を番外にして、一番好きなのは『ゴジラ対ビオランテ』である。バラとゴジラの遺伝子が融合して誕生した怪獣ビオランテは、そのグロテスクな造形が魅力的で、いまわしい生き物の気味の悪さを空気感で伝えてくる。触手ともいえるビオランテのツタの先がゴジラの手のひらをつらぬくと、紫色の血がブシャッと飛び散るところなど、本当に痛そうで背筋に来たものである。
ゴジラの素敵なところは、ひとえに破壊だろう。私たちが営々と築きあげてきた町や、文化遺産を、冷酷に、無残にゴジラは壊しいてく。あるところにわたしはこんなことを書いた。
<昭和29年の映画『ゴジラ』の中で、海から上陸してきたゴジラがようやく復興の兆しが見えてきた東京全土を、あたかも大空襲の再来のごとくに無残に蹂躙するあの紅蓮の炎を見て以来、私たちの繁栄は嘘だと告発する裏返った希望と理想を、戦後史の中につい探してしまういけない癖が私にはついている。その意味では、ゴジラはまた水からあがってきた戦死者の霊であるのだが>
とにかく、こよなきゴジラファンのわたしにとって、『ゴジラ1954-1999超全集』はとりあえずめくらねばならない1冊であった。
どういう本かと申しますれば、全ゴジラ映画に登場する怪獣たちのデータに、あらすじを加えて、名場面集を選りすぐったビジュアルブックである。編集はどちらかといえばお子様より。2014年7月のハリウッド版『ゴジラ』第2弾の公開にあわせたデータブックでもある。だが、購入層は、チルドレン以外にわたしのようなオトナ子供をも明らかに射程範囲として狙っているに違いない。
歴代ゴジラの着ぐるみは作り替えられ、作品によって体型や容貌が変わってきているのがはっきりと見て取れるのが楽しいが、なにより凶暴なときのゴジラの顔にはたまらない魅力がある。全ページカラーというのも読みでがある。まったくどうなってんだか、東宝の特撮映画DVDを54巻所持しているわたしみたいな物好きはいないだろうが、本書をガイドにおもしろそうなタイトルをあらためて借りてみるのもよいのではないか。おすすめは、いちばん最初のモノクロ「ゴジラ」、さっきいった『ゴジラ対ビオランテ』、『ゴジラ対ヘドラ』、それに東宝作品ではないが金子修介監督の『ガメラ三部作』といったところであろう。
『パシフィック・リム』やハリウッド版『ゴジラ』を見た方は、ぜひ怪獣映画を見直されたい。
関係者へのインタビューも収録
ビオランテの造形は凶暴で魅力的
キングギドラは徹底して悪役だ
第1作「ゴジラ」は夜のシーンの撮影がすばらしい
キングコングまで登場する。スタッフにはアメリカ映画対日本映画の心意気があったのだろう