マンガ家・島本和彦の自伝? 天才たちの若かりし日と、ある青年の黒歴史…

2014/7/11

アオイホノオ(1) (ゲッサン少年サンデーコミックス)

ハード : iPhone/iPad/Android 発売元 : 小学館
ジャンル:コミック 購入元:Kindleストア
著者名:島本和彦 価格:※ストアでご確認ください

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 各巻の頭には、巨大なフォントで「この物語はフィクションである」と断り書きがあるのですが、フィクション成分は少なめなんじゃないかと思う作品です。舞台は大阪芸術大学がモデルと思われる、大作家芸術大学という学校。そこに通う焔燃くんが、若き日の天才たちの仕事に打ちのめされたりしつつも漫画家を目指す物語…のはずですが、『まんが道』みたいにはなりません。本作のドラマ化が決定したと思ったら、直ちに連載で主人公の焔燃くんに「アニメ化は素晴らしいが、ドラマ化は…」とセンターカラーで言わせてしまうような作品です。

 さらに他の漫画家などの名前をもじったりせずに、そのまま出しています。後のガイナックスの人々も、矢野健太郎も出てくる。矢野氏はFM-TOWNSという富士通のパソコンがそろそろ終わるぞっていうときに、フラグシップマシンを買ったりして、当時高校生だった私の度肝を抜いた漫画家なのですが、この時のエッセイを読んだ私はまるで焔燃くんのような発想にいたるのです。「漫画家はいい! 漫画家を目指そう!」と。

 おそらく、こういう気分というのは、漫画やライトノベルなど、作者と読者の距離が一見近いように見えるメディアではよくあることなのでしょう。そういう意味では、焔燃くんという漫画家を志望しつつ、アニメーターもいいなとか思っているくせに、ちっとも作品を作らない青年というのは、実に等身大なのだと思います。

 だって焔燃くん、漫画家志望で芸術大学に入ったのに、漫研に入らないし、バトミントン部に入って、トンコさんという先輩の彼女にマンガやアニメの講釈をたれる始末なのですから。周りが着実にクリエーターへと進んでいく中で、あだち充作品や高橋留美子作品を読んで勝った気になっている姿は、まさに作家志望者の黒歴史シアター。現実に打ちのめされる焔燃くんの姿を見て、一緒に悶絶するのもありだし、笑い飛ばすのもありだと思う。そんな島本和彦氏の自伝的作品です。


焔くんの理論では、絵の下手な新人が出てきているから甘いということらしいです

別の巻では、あだち充は野球がわかっていないとも断言しちゃうのです

ありがちな発想…

一時の京大ミス研みたいな漫研だったのですね