してしまうことを「しない」で、日頃のイライラ、クサクサ、クールダウン

小説・エッセイ

更新日:2014/8/1

しない生活 煩悩を静める108のお稽古

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : 幻冬舎
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著者名:小池龍之介 価格:800円

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 「しない生活 煩悩を静める108のお稽古」という書名を見て、すぐに思い浮かべた「しない」は、欲情、浮気、不倫にナンパ。しかし、目次を見みると、「しない生活」の「しない」は、欲情、ナンパなどの「しない」とは少し次元が違うような…。本書の「しない生活」の「しない」とは、なにを「しない」ことなのだろう。

 「すぐにメールの返信がなくてもイライラしない」「クサクサした気分のときこそ優しくふるまう」「知人が高く評価されるとなぜ反射的に否定したくなるのか」「誉められても喜ばず、貶されても嘆かないように」「失敗しても無心なら爽やか、言い訳をすると見苦しい」(目次から)。本書は、イライラする、ムカムカする、もう頭に来た、許せない! など、日頃ありがちないろいろな心の動揺(これらの乱れた心理状態を仏道では煩悩と呼び、その数は108とされ、本書には同数の見出しがたてられている)を、仏教の教えをもとに静め、心の安定を得る手助けをしてくれる1冊。

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 たとえば、「すぐにメールの返信がなくてもイライラしない」では、(イライラするのは)「ものごとは公平に、釣り合いが取れてなきゃ気が済まない、という強迫観念がつきまとっているのです。この脅迫観念につけられた名前こそまさに“正義感”という煩悩」。だから人は、せっかく出したメールに返事がないという不公平感に不協和を感じイライラする。そこで、そのイライラを静めるには、「この世は、不公平なのが当たり前だという厳然たる事実に目を開いてみる。(中略)“返事はくれるのが公平だ”という正義の妄想を離れれば、ゆったり気長に“待つ能力”が育ちます」という。

 この場合、なにを「しない」のだろう。メールに返事がなくてイライラすれば、しがちなことは催促メール。本書の「しない」とは、このようなことを「しない」こと。イライラ解消へなにかをしてしまうではなく、イライラしている自分に気づき、なにも「しない」こと。「すなわち、次の手を打たない、“しない”でただ、内面を見るだけに踏み留まること、この、自己内省のお稽古こそが、“しない生活”なのだとも申せましょうか」(「あとがき」より)。イライラすることがあれば、そっと立ち止まり、自分をみつめる。そのような「しない生活」を送ることが、心を静め、心の平安につながると。

 著者は鎌倉にあるお寺の住職さん。本文には、お坊さんもときにイライラ、クサクサすること、またあるアイドルに夢中になりかけたことがあるなど、その心持ちが率直に書かれ、修行を積んだお坊さんでも煩悩に悩まされることがあるんだと、煩悩のままに生きている者も少しは癒される。本書ははじめから読むのもいいし、心乱れたとき108の見出しからその気持ちに合った一文を読むのもいい。また、仏教、釈迦、煩悩などのキーワードで本文検索し、そこだけ読んでいくと、きっと新たな気づきがある。

 「仏教」で本文検索してみて、印象的だった一文。
「仏教で苦聖諦(くしょうたい)、つまり“苦しみが聖なる真理”とされるゆえんは、己の苦しみに気づくことでこそ、苦しみは癒え、心安らぐからなのです」


目次から

「心を保つ」には「体を保つ」。「体を保つ」には、食事は「腹七分目」がおすすめ

「しない」とは、「しない」でただ内面を見るだけにとどめること。それが「しない生活」