あまり優しくないこの世界で、私たちが生きていくために必要な力のこと

更新日:2014/7/30

中卒労働者から始める高校生活 1

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : 日本文芸社
ジャンル:コミック 購入元:BookLive!
著者名:佐々木ミノル 価格:432円

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 タイトルのインパクトがとにかく強すぎて、とりあえずコレがマンガのタイトルだとは思えないよなあ―というのが第一印象だった。まるでちょっとセンセーショナルなタイトルをつけたノンフィクション本みたいに見える。しかしこのマンガは、作者の実体験をもとにはしているようだがあくまでフィクションである。

 主人公の真実は、死別した母親と刑務所に入っている父親の代わりに、明るく元気だがちょっと…いやかなり足りない妹を養い、2人で力を合わせて生活していくために、中学卒業してからすぐ工場で働き始めて3年目の青年だ。

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 彼は今まで「両親がいなくても、高校に通っていなくても、まじめにきちんとやっていればきっといずれ報われる」と信じ、がむしゃらに日々を過ごしてきた。しかし、大抵の現実はそうであるように世界はそんなにシンプルにできていなくて、彼はやっぱり社会の中で「中卒の自分」「高校に通っていない自分」を見下す目を感じてしまい、そんな社会と、そんな境遇になるしかなかった自分を呪う。そこで彼は、中学浪人が決定しそうだった妹が通うという通信制高校に、自分も通うことを決めるのだ。

 社会に出て働いていたとはいえ、結局彼はまだ成人もしていない子供に過ぎない。
よく「高校時代に学校で習ったことなんか、社会に出てから全然使ってないよ」と笑って言う人は多いけれど、それでも「高校生活3年間はまったくの無駄だった」と言う人はそんなにはいない、と思う。高校3年間で学ぶことは勉強だけではないし、高校時代に仲良くなった友人が、社会に出てもずっと親交が続いているケースも多々あるだろう。ちょうど思春期と呼ばれる時期であり、ここらへんの時期に反抗期を迎えている人も多いだろう。はじめての彼氏彼女にキャッキャウフフしてたりもする時期かもしれない。それらの経験すべてを犠牲に働いてきた真実は、今ここで通信制高校に入学し、改めて経験できなかったそれらをひとつひとつ、欠けてしまったピースを埋めるように経験していくことになるのだ。

 ただひたすらに社会と戦うことしか知らなかった彼が、学ぶことを知り、他者の存在を意識し、仲間を作り、恋を知って、どうやって変わっていくのだろう。世界を呪うしかなかった彼が、世界と戦う方法と、世界を愛するやり方を知ってくれることを願ってやまない。


妹のこの明るさは清涼剤とも言える、かもしれない

最初は「高校生になる」ことを拒否する真実

中学卒業時点でこの覚悟があるのは偉い、が同時に悲壮感も漂う

「自分は中卒」という現実に打ちのめされる真実

この絶望のしかたはまさに思春期男子

恋の予感、はたいていファーストインプレッションが最悪