流れ星からわさびおろしまで。日本最初の百科事典に見る江戸時代の暮らしの知恵

更新日:2011/9/12

和漢三才図会 (1)

ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android 発売元 : 平凡社
ジャンル:教養・人文・歴史 購入元:eBookJapan
著者名:島田勇雄 価格:1,512円

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平凡社の電子書籍はほかにはないマニアックぶりが大好きで、いつも新刊をチェックするんだけど、これを見つけたときは小躍りしそうになった。
  
江戸時代に編まれた、日本で最初の百科事典『和漢三才図会』。 気象、天文、動植物、生活道具など、ありとあらゆることが図解入りで載っている。
  

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…モノクロでとっつきにくい学術書って感じだと思うのだけど、今の暮らしとつながっているところがあって、おもしろいのだ。抜粋すると、第1巻の天体・気象の話は、当時の人が夜空や風から何を読み取っていたのかがわかって興味深い。また、果物や薬草の出ている第16巻は、さすがお医者さんのまとめだけあって、非常に詳しい。
  
私が気に入っているのは、暮らしの道具が出ている第5巻。台所道具や化粧道具、農具なんかが図入りで説明されている。用途に応じた生活道具がおびただしい数並んでいる。これを全部、職人が手で作っていたわけだよね。そしてそのひとつひとつを、チームテラシマが「これは何ですか」なんて聞きながら記録していったわけだよね。
  
台所道具なんて、鍋釜かまどはもちろんのこと、「わさびおろし」まで出ている。図解が目の細かい表側と、細かい表側、両方ともあって「表ではわさび、しょうが、つくねいもなどを下ろす。裏側は大根をおろせる」なんて説明が。この生真面目さ、じーんとくる。
  
今で続いている文化があり、消えてしまったものもある。江戸時代の近さ遠さを感じることのできる、ちょっとしたタイムトラベル気分の図鑑なのだ。

第1巻の目次。ページ数をタッチすると、該当ページへ飛ぶ。ちなみに約300年前の編纂当時はなんと百数巻! 電子書籍版はその口語訳で、全18巻。最終巻には総目次、総索引もつく

大阪の医師、寺島良安が三十年以上かけ、編纂した。「医者という職業は、天文、地理、人事を知ってはじめて人の疾病について語れる」という信念から生まれた百科事典。これは天文の部

第6巻、畜類の「ぶた」はイノシシの絵。熱病やぜんそくなどに効く、戊辰の日にかまどを祀るときに使うなどの説明が。今の豚とは関わり方も違う。第16巻の植物の絵も美しく、こんなポストカードがあったらいいのに…と妄想(寺島センセイ、不真面目な生徒でごめんなさい)