萩尾望都の最長編にして最高傑作

2011/1/12

残酷な神が支配する (1)

ハード : PC/iPhone/iPad/Android 発売元 : 小学館
ジャンル:コミック 購入元:eBookJapan
著者名:萩尾望都 価格:432円

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読み終えた時、心から思いました。
「もうこの先10年、日本から他のマンガが発売されなくなっても構わない。この作品さえ手元にあればいい」と。
愛、恐怖、憎悪、嫉妬、苦痛、そしてエロティシズム。
人と人の間に生まれる、色とりどりの感情の渦。
絵と言葉の両方を駆使して、それらを余す所なく表現したマンガ史に残る名作。
私の生涯のベストワンです。

ボストンで暮らていた14歳のジェルミ。だが母の婚約によって彼の人生は一変する。新しい父となる大金持ちの英国紳士グレッグが、母の幸福と引き換えにジェルミの身体を求めてきたのだ。それはただ一度きりの“取引”のはずだったが…。
前半は、逃げ場のない苦痛と苦悩の物語です。
最愛の母のために、義父の性的虐待に応じ続けるジェルミ。
14歳の少年が心身ともに蹂躙されていくさまを、作者はこれでもかというほど執拗に描きます。あまりに悲惨な展開に、ここで読むのをリタイアしてしまう人もいるでしょう。が、なんとか辛抱して読み進めてください。
ジェルミの精神が限界を迎え、義父と母は“事故”によって命を落としたとき。
そしてその事故に義理の兄イアンが疑念を抱いたとき。ここからが本当の物語の幕開けです。
母の死を境に堕ちていくジェルミ。贖罪の気持ちから彼を救おうとするイアン。
ふたりの間に生まれる葛藤と、恋にも似た引力。めくるめく墜落と衝突、心理戦、そしてゆるやかな再生。作者は小説にも映画にも不可能な、マンガだけができる自由な表現方法を駆使して、2人の主人公の姿を丹念に描き切ります。
心と身体のすべてをぶつけ合った彼らが、最後に辿りついた着地点とは――。
「マンガって、すごい」。
私は読後、圧倒された気持ちでそうポツリと呟いていました。
美しく、澄み切ったラストです。

「こいつは人殺しだ」。この不穏な独白からすべての物語が始まる

ボストンの売り子から、イギリスの資産家の妻に。だがシンデレラストーリーの陰には…

サンドラと婚約したグレッグの真の狙いは、息子のジェルミだった

グレッグの心理的拘束により、逃げ場を失っていくジェルミ

義理の兄弟となったイアンとジェルミ。あるひとつの悲劇の後、彼らの物語が始まる

クールなイアンと感情的なジェルミ。この後、幾度もこの関係性は逆転を繰り返していく… (C)萩尾望都/小学館