いわくつき、未完のまま連載が終了した『クリームソーダシティ』

コミック

2014/8/25

クリームソーダ シティ(1)

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : 小学館
ジャンル:コミック 購入元:BookLive!
著者名:長尾謙一郎 価格:432円

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 ビッグコミックスピリッツといえば、『美味しんぼ』の福島原発問題が記憶に新しいが、その影でもうひとつの問題作が未完のまま連載終了となっていた。それが、長尾謙一郎氏の『クリームソーダシティ』という作品。

 どういう話かというと、売れないミュージシャンの男2人組が主人公で(作中でもそのまま名前が出ているから書くけれど、どうやら小室ファミリーだったらしい)、自分たちが不遇なのは世の中が間違っているから、というような発想にたどり着き、街のノイズを消す活動と称して演説中の候補者を暗殺する。すると怪しいひげじいさんが駆け寄ってきて、クリームソーダシティと呼ばれる楽園にたどり着けるというもの。

 しかし今書いたあらすじ、つまりクリームソーダシティにたどり着くというのは、記念すべき第1話の中盤。つまり不遇の時代を経て、悩み、その結果として発砲事件を起こして楽園にたどり着くという物語ではない。全体の構想は、未完のまま終わっているので不明だが、シャングリラを探す旅を描くつもりはなかったようだ。

 その後、クリームソーダシティから陥落するか否かという葛藤は多少あるが、そのことがテーマというほど大切な要素とも思えない。読後感はとても不安定で、なるほど不条理というやつかとも思うのだけど、おそらくその理由はクリームソーダシティに行くのが目的でもないし、クリームソーダシティにいることが、次の目的につながっているわけでもないように読めてしまうからだろう。

 とてもとらえどころがないように読める作品だが、内容とは別のところで話題になった。連載が打ち切りになったあと、コミックナタリーに著者が寄せたコメントというのが掲載されたのだが、それが「権力により、作品の発表を阻害された」という内容だったからだ。これについては、J-CASTニュースやITmediaなど、そういう話題が好きそうなサイトにも掲載されている。

 なにしろ冒頭から候補者暗殺な上に、不道徳なことをすれば楽園に行けるというような内容だし、さらには上述の小室ファミリーにとどまらず、毛沢東とかも伏せることなく名前が出ている。だから消されたのだ、といいたくなる気持ちもわかる。しかし、ひとつ反例をあげると、暗殺しまくりの『ゴルゴ13』は読んだことがない人でも知っている有名作品で、なおかつ同じ小学館のビッグコミックの連載作品である。

 もし、『ゴルゴ13』ならいいけれど、『クリームソーダシティ』を認めるわけにはいかないという権力があるとすれば、彼らは作品ではなく、長尾氏が『クリームソーダシティ』のような作品を描く気になった勢いのようなものを読み取る、相当なマンガ好きだと思うのだが…。


これが主人公の2人組、皇とTAKO介

売り出しに失敗した結果、こういう思想に目覚めたらしい…

だが、遊び半分ではなく本当に街頭でぶっ放すまでになってしまう

1巻中盤でたびたび話題に上る、クリームソーダシティからの陥落