スタジオジブリには「すべらない話」がいっぱい!? 天才達が自由すぎる!

更新日:2014/8/29

仕事道楽 ― スタジオジブリの現場 (新版)

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader 発売元 : 岩波書店
ジャンル:教養・人文・歴史 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:鈴木敏夫 価格:950円

※最新の価格はストアでご確認ください。

 「スタジオジブリはみんなが大好き!」「スタジオジブリは最高のアニメ会社だ!」「日本の宝だ!」
というのが今の世の中から見たスタジオジブリへの一般的な評価だと思うのですが、あまり良い良いと言われてしまうと私のようなひねくれた人間は多少引いた目で見てしまい、「そうかなぁ」とつい言いたくなってしまうものです。

 でもやっぱりこの会社はスゴイ。作品の内容については言うまでもありませんし、日本テレビとタッグを組んで新作映画やテレビ放映をまるで夏の風物詩のようなイベントにしてしまっている宣伝の仕方もとても見事だと思うのです。

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 そしてこれくらいの制作会社にもなると、世間の関心は監督だけでなく、プロデューサーにまで集まってしまうというのもまたスゴイ。そんなことからスタジオジブリの現・代表取締役プロデューサーである鈴木敏夫氏はこれまでに何冊かの書籍を出版しているのですが、本書は2008年に発行された既刊本に増補した最新本となっています。

 本書は著者が初めてアニメの仕事に携わるきっかけとなった『アニメージュ』の創刊当時から現在公開中の最新作『思い出のマーニー』の制作時までをインタビュー形式で振り返る、スタジオジブリの歴史が著者目線で語られた1冊となっているのですが、その中で面白かったのが著者の語るエピソードがまるで「すべらない話」を聞いているかのようで、実は笑える本だったということです。

 簡単に紹介しますと例えば『もののけ姫』で当初「エボシ様」は死んでしまう予定だったそうなのですが、宮崎駿がキャラクターとして強く思い入れをしまったために殺すことができず、片腕のみを失うという結末に変えた挙句、鈴木氏に「これで勘弁してくれ」と言ったのだそう。

 高畑勲氏のエピソードもあります。まだスタジオジブリが設立される前のこと、『ナウシカ』の制作に入る際にプロデューサーを高畑氏にやってもらおうと鈴木氏がお願いしに行くと、彼は決して首を縦には振らなかった。そして2週間も断り続けた挙句、最後はいかに自分がプロデューサーに向いていないかを丸々1冊綴った大学ノートを見せてきたのだそうです。でもその後、落ち込む宮崎駿を見た鈴木氏が「友人が困っているのにあなたは力を貸さないんですか!」と強く言ったところ高畑氏はあっさりOKしたというのですから思わずツッコみたくもなります。

 そして実は一番面白かったのが鈴木氏の元上司で徳間書店やスタジオジブリの初代社長も務めていた故・徳間康快氏についてのエピソードの数々です。「金なんて紙だからな」と言い張る徳間氏と著者のエピソードは驚くことばかりで本書一番の盛り上がりを感じました。もしかしたら著者の人生に一番の影響を与えていたのは彼なのではないでしょうか。

 やはり成功をしている人達はその生き方も豪快なものです。『思い出のマーニー』とあわせて本書を読んでみるとより一層、映画を楽しめるかもしれませんね。

□ストーリー 4
□設定 4.5
□文章 5
□心動かされ度 5
□美輪明宏マネしたくなり度 5


宮崎駿高畑勲鈴木敏夫の3人が揃って写真を撮るのはとても珍しいことなのだとか

ある日の著者と宮崎駿監督のやりとり。これだけでもふたりの関係性がよく分かりますね

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