主義主張が一本通った著者がこれからの日本人の生き方を諭す!

更新日:2011/9/6

自然に学ぶ 生活の知恵−「いのち」を活かす三つの原則−

ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android 発売元 : 日本教文社
ジャンル:趣味・実用・カルチャー 購入元:eBookJapan
著者名:石川光男 価格:756円

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正直に申しますと、こういう種類の本を読んだことはあまりありませんでした。
  
「生活の知恵」というと、主婦がいかに経済的に家計をまわすかとか、いかにエコロジーで倹約するかというようなイメージを持っていましたが、なかなかどうして、これは哲学本のようなのです。自然と自分をのつながりを意識した著者の「生き方」本とでも言えるでしょうか。

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冒頭から、江戸時代の「つながり」と「ものさし」の考察をしているのですが、これが読者をひきつけます。各時代には、その時代独特の「ものさし」があって、人はそれに従って生きていると。江戸時代では人とのうまい「つながり」が生き方のものさしとなり、戦時中には「国」が生き方のものさしだった。戦後は「個人」がものさしになって、社会が発展していったと、著者は主張します。
  
欧米的な個人主義が社会の「ものさし」になった結果、日本人は自然と深く関わってきた自らの伝統や歴史を忘れ、その生き方は結果的に個人の健康や幸福の在り方にも大きく影を落としてきた、と。「つながり」「はたらき」「バランス」を3つのキーワードに、著者は時に歴史的見地から、時に健康管理の科学的データを、といろいろな観点から考察し、自然に戻る生き方をすれば、健康も幸せも戻るということを全体を通して訴えています。
  
読みながら、ふと、近代が終わった頃から人間の生活の急激な変化が始まったのかな、とか、それまでの時代はデカダンスへ向かう感覚はなかったのだろうか? とか、便利を追求する生活はいつの時代にもあったはずなのに、それがバランスを崩してきたのはいったいいつからだったのだろう? と考えさせられました。
  
江戸時代にだって、その世を憂う人たちは確かにいたはず。それでも「バランス」が取れていたように見える、現代と過去の違いは何なのでしょう?
  
著者はテレビもテレビゲームも脳にはよくない、お手玉などの伝統的な遊びを通して子供との絆を回復し、ゲームの操作でない手を使った昔から遊びで、日本人の器用さ、ひいてはものつくりの伝統回帰へと訴えます。ちょっとラディカルな印象もぬぐえませんが、「エコ」「エコ」とカタカナの付いた製品を「買って」、エコの気持ちになってしまうような現代人には、著者ほどの筋金入りの「伝統回帰主義者」の存在は強烈に刺激的では。
  
現代に関する否定的な表現が目立つのを差し引いても、久々に「主義主張」の明確な人の本を読んだ、という印象です。

江戸時代は「人と人のつながり」だけでなく、「人と自然のつながり」も豊かだった、と。一体いつから日本人の変化に加速がかかったのでしょう?

著者が説く、「人間の複雑系モデル」。簡単な図ですが、考え方は様々なジャンルを包括しいていて複雑です

「日本人は米をもっと食べなければ」に、私も一票!

テレビの害を主張する人、最近あまり見かけなくなってしまいました。私も著者に一票!

テレビゲームをお手玉に代えて。ちょっとほほえましいほどの提案ですが、意外とこういう一歩が社会を変えてゆくのかも (C)石川光男/日本教文社