神なき世界を幸福に生きるニーチェの力強い思想

更新日:2011/9/6

ツァラトゥストラかく語りき ─まんがで読破─

ハード : PC/iPhone/iPad/Android 発売元 : イースト・プレス
ジャンル: 購入元:電子貸本Renta!
著者名:ニーチェ 価格:105円

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わたしは「マンガで読破」シリーズのちょっとしたファンである。

よほど覚悟しなければおいそれと取りかかれないような剣呑な大著や、脳みそが蝶結びになりそうにむずかしい思想書やらを、滑らかな読みやすさと、わかりやすい言葉への言いかえで、誰でも入っていける広き門に実現してしまっているからだ。

 
むずかしい事柄をむずかしく言い表すのはむずかしくない。むずかしいことをやさしく表現するのがほんとうにむずかしいのだ。

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ただ、そんなお気に入りの「マンガで読破」なのに、ときどきホームランかっ飛ばして三塁側へ突っ走っていっちゃっうみたいな、めまいのしそうな取り違えがあって、寝込みそうになるのが玉にキズなんだね。
  
カフカの「変身」つうの、ザムザ君がある朝突然虫になっちゃって閉じこもったのか閉じ込められたのか部屋から一歩も出ず、家族との関係が次第にゆがんでいくという黒い笑いに満ちたシュールな中編小説だけど、これ「マンガで読破」で読んでたら、原作にはいっさいないザムザ君の行商先での悲喜こもごもや幼なじみとの再会っていうオリジナル・エピソードがだいぶのページ描かれていて、腰を抜かした。
  
これはいいのだろうか。カフカはなんといっているのか。可か不可か。
  
このシリーズは、原作のかわりに読むというコンセプトだとわたしは思っているから、原作もこういう話だと読者が勘違いするのはルール違反じゃないのか。それとも原作のエスプリがうまく伝われば手段はよいのか。おそらくそう考えているのだろう。
  
実は「ツァラトゥストラかく語りき」もこの伝で、19世紀のドイツの牧師の家、ツァラトゥストラとアレックスという二人の少年の成長を描きながら、返す刀で超人思想をあぶりだすという一種のホームドラマになっており、でも原本は10年間山にこもって思想を鍛えた哲人が下山したところ誰ひとりとして「神が死んだ」ことを知らぬのに驚愕し、あとは怒濤のアフォリズムにてニーチェ思想の神髄をブチ放っていくという奇書。
  
だからニーチェが牧師の子に生まれてるので、ツァラトゥストラとニーチェ本人の人生を重ねようとした手法ではあるのだろうね。ま、確かに、永劫回帰思想のことなどもちゃんと伝えようとしてるので、読んでると、許せるのかなあという気はしてくる。とりあえずニーチェにちょっかい出すに最良の一書ということでOKっしょ。

ニーチェといえばこの決めぜりふ 巻頭から炸裂である

続いてニーチェの基本概念を手短に説明し物語に入る

二人の少年のうちどちらかひとりは捨て子である

19世紀の産業革命を経て、人々の信仰は形骸化していった

神への不信も心の中に影を落としはじめる

やがてザロメという謎めいた女がツァラトゥストラを目覚めさせる旅にいざなう

そしてツァラトゥストラは、とうとう、つぶやく、神は死んだと

次第に超人思想が形成されてゆく

誰も抜けだすことのできない永遠回帰とは?

ツァラトゥストラは深く分け入った山中で奇怪な老人に出会う。それはいったい誰なのだろうか