ストーリーをぶち上げない、これがマレーシア航空MH370便の本当の事故検証

2014/9/14

マレーシア航空機はなぜ消えた

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader 発売元 : 講談社
ジャンル:ビジネス・社会・経済 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:杉江弘 価格:1,296円

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 自分でも恐ろしいことだと思うのですが、クアラルンプール発、北京行きのマレーシア航空MH370便が消息を絶ったと報じられたのは2014年3月8日。まだ半年もたっていないというのに、それも機体の残骸はもちろん、具体的な物証は何ひとつ出ていないというのに、この見事なまでの記憶の風化はなんだろうか。

 事故調査というのは、芸能人の浮気でも、アイドルの飲酒でもないのだから、納得できる材料が出そろい、原因がおよそ確定し、教訓を活かせるようにするまでが仕事じゃないのか? というスタンスで、陰謀説などの色物ストーリーを次々と切って捨て、今出ている数少ない情報を精査していくというのが本書の大まかな構造です。

 そこには、著者である杉江氏が日本航空の運行安全推進部で長年研究されてきた知見のみならず、それ以前からのフライト経験も存分に反映されており、航空ファンならずとも興味深く読めると思います。柔らかく言うと、この本を読んだなら、ブラックボックスを黒塗りの箱だと思っているような人たちが、夏の怪談番組を作るようなノリでやっている検証番組なんて見てられなくなりますよ、ということです。

そもそも、「消えた」というのはいったいどういうことなのか? この21世紀の世の中、地球上で旅客機が隠れる場所なんてあるのか? 理屈を知らないと、「きっとタリバンの支配地域に着陸したに違いない」などというおかしな説に惑わされます。管制に使われるレーダーの有効距離やその仕組み、またMH370便を最後に捕らえたという軍のレーダーの運用のされ方、旅客機が搭載している無線装置の機能、そういう知識に基づきあり得ない話しを切り落とし、本当のところはなんだったのかということに迫っていくのは、不謹慎ではありますが、正直わくわくします。本当に優れた科学番組が、案外淡泊な作りなのと同じかも知れません。むしろ、終章の「事件の全体像と“核心”に迫る」はいらないんじゃないかと思うほど、検証は見事なものでした。


現代の旅客機は、常に機体の情報を航空会社やメーカーに送信している

管制を受けて飛ぶということが、どういうものなのかがわかる

中心的な無線装置、トランスポンダー

そして、エーカーズの解説