愛すべき泥臭さで突き進む! 無鉄砲な青年たちのボランティア奮闘記

小説・エッセイ

更新日:2012/3/2

僕たちは世界を変えることができない。But, we wanna build a school in Cambodia.

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : 小学館
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:電子文庫パブリ
著者名:葉田甲太 価格:507円

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震災後、いつにも増して耳にするようになった「ボランティア」、「チャリティー」という言葉。日々量産されるこの言葉たちに対して、言い表せない“ムズムズ感”を感じている方、いませんか?

私もその一人。声高に「ボランティア大好き!」なんて言う人たちに対して穿った見方をしてしまうし、“チャリティー○○”って付ければ何でもオシャレっぽく聞こえてくるのも、な~んかイヤ。そんな形容しがたい奉仕&慈善事業アレルギーを持ちながらも、この本を手に取りました。そうだよ、結局“世界を変えることができない”んだよ、と思いながら。

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「自分はこのまま当たり前の毎日を生きていくのか…」

この本の著者である葉田甲太さんは、どこにでもいる平平凡凡な大学生。それなりに楽しい毎日を送っているけれど、漠然と“なんだかなぁ”感を抱えているのです。そんなザ・モヤモヤ青年である彼が、ある日「150万円でカンボジアに小学校を建てよう」というチラシを発見。そして、「この平凡な日々を打破できるのはコレだ!」と立ち上がります。そのチラシを片手にすぐさま仲間を集め、どうやったら150万円を貯められるかを議論。集まったのは彼と同じ、モラトリアム真っ只中の大学生たち。彼らは話し合いの末、「クラブでチャリティーイベントしようぜっ」ってことに…。にしても、彼とその仲間たちは、クラブに足を踏み入れたことがない。さらには肝心のカンボジアに行ったことだって、一度もないのです。

いかにも現代っ子っぽい、安直で明るすぎるその発想と行動。彼らが壁にぶち当たる度、「もうボランティアなんて止めればいいのに…」と、ハラハラドキドキ必至。しかし、いつのまにか応援してしまう自分がいました。それは、彼のテンションがとても素直に綴られているから。

「150万なんて貯められないかも。突然大きな借金を背負ったような気持ちになった」

と、ぐったり意気消沈したかと思えば、

「自分が大勢の人たちを救えるヒーローに思えてきた」

とか急に元気になったりして!

自問自答を続けながら、「自分にできること」を求めるその姿勢。女の子が好きで、セックスも好き。だからナンパもするし、オナニーもする。カンボジアのことなんか忘れてお酒を飲みまくる。学校建設というひとつの目標へ向けて一進一退を繰り返す彼の、飾らない言葉たちがスッと胸に入ってきます。

そして、ずっと気になっていたこの本の題名。無事に小学校は建ったけれど、それでも“世界を変えることが出来ない”。変えられないけれど何かやってみる。いや、そもそも世界を変える必要なんてないんじゃないか。彼はこのタイトルに、どんな意味を持たせたかったのだろうか。ネガティブな意味じゃないだろうけれど、複雑な想いが交錯したんだろう。…と色々深読みしていたら、実は大好きな銀杏BOYZの曲名から引用したそう。

どこまでもラフに世界と係わっていく彼の生き方に、自然とボランティアアレルギーが薄れてきた私でした。

カンボジアに学校を建てようという彼の提案に、仲間たちの反応は「マジか!」、「うほー」。大興奮の様子!

150万円会議で、出てきた案は次の通り。バンド大会→誰も見にこねーよ、フリーマーケット→貯まるまで時間がかかりそう…、じゃあスーパーフリーみたいなクラブイベントは!? に辿り着く

150万円会議で、出てきた案は次の通り。バンド大会→誰も見にこねーよ、フリーマーケット→貯まるまで時間がかかりそう…、じゃあスパーフリーみたいなクラブイベントは!? に辿り着く

初めてクラブに足を踏み入れた彼らは、愛おしいダサさが全開。本著はブログを読んでいるような気軽な感覚で読めるため、文字はゴシック&横組みがおススメ!