崇高な光を宿した挿絵入りダイジェスト版聖書

公開日:2011/9/6

ドレ画 聖書物語

ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android 発売元 : インタープレイ
ジャンル:趣味・実用・カルチャー 購入元:eBookJapan
著者名:山室静 価格:648円

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聖書物語というのは、ガチ聖書ではなくて、聖書に載ってるいろいろなお話を短く分かりやすく書き改めて一冊にまとめた入門書、ダイジェスト版、まあそういったものですね。
  
聖書はキリスト教のベースブックだから、どうせ宗教がかりの、抹香臭くて説教じみて退屈で、地味ぃな眠くなる本、そう思ってるとこれが大間違い。ちょっとそれはどうなの、と神様に手紙を出したくなるようなヘンテコな逸話がいっぱい書いてあるわけです。

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アダムとイヴ。食べちゃいけないっていわれたら食べたくなるの知ってんでしょ、神様。アンタが人間作ったんだから。
  
ヨブ。なぁんも悪くないおじさんヨブの信仰が深いのは幸せだからですゼ、ひどい目にあったらてきめん恨み言いいます、と悪魔にいわれて「じゃあ、好きにやってみ」って、神様アンタは鬼か。たちまち家族に死なれ、家畜も土地も失い、ひどい皮膚病で灰の中を転げ回るヨブ。「わたしゃ間違ってない」と主張する彼に神はなんと答えたか。これがいいのよすこぶる、読んでね。
  
「ダ・ヴィンチ・コード」で有名になったイエスをもてなしたマグダラのマリア。この人には姉さんマルタがいて、イエスとその弟子一行を家に迎えてさてご飯作りなどの家事はマルタに全部かぶさり、マリアは四六時中イエスの足元にいるのね。これ不公平だって訴えるマルタにイエスがなんつったか。これもキツイの、ちょっと人間やめられない感じになります。
  
本書は、世界が作られる「創世記」からいま言った「ヨブ」のエピソードあたりまでの「旧約聖書」と、イエス・キリスト誕生から世界の終末を預言したといわれる「ヨハネの黙示録」までの「新約聖書」の2つともを収めています。ちなみに「旧約」「新約」というのは、神様との「昔の契約」、「新しい契約」という意味ですね。
  
でもってもう一つこの本の目玉は、19世紀のフランスの版画家ギュスターヴ・ドレが挿絵を描いているということ。この美しさが特筆ものなわけです。ひと目見たら優美な線に魅入られますね。それから光、絵にあふれる光と闇は、神のもたらす生きることの光というか、命のメタファーというか、宗教的にはそういう伊賀あるわけですが、単純に絵画としても本当に絵の中から光が差してくるような錯覚に陥る崇高さをそなえています。そしてアングル。場面を劇的に印象深く、またそのエピソードの意味を考えさせるように仕組まれた構図が見事のひと言。
  
ドレを知るだけでも読む価値あります、ほんとは。

光あれと神様が言うと光があらわれた 創世記より

楽園を追われるアダムとイブ

バベルの塔を描いた有名な一枚

イエスは洗礼を受けたのち荒野をさまよい悪魔の誘惑を受ける

あなたが神の子ならここから飛び降りてごらんとイエスをそそのかす悪魔

ヨハネの黙示録から有名な一説、青ざめた馬にまたがった死に神の絵 (C)Yamamuro,Shizuka 1979