2014年ノーベル平和賞受賞!女性の教育を訴え続けるパキスタン少女・マララ(17)の素顔に迫る

小説・エッセイ

更新日:2014/11/4

わたしはマララ

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著者名:マララ・ユスフザイ、クリスティーナ・ラム、金原瑞人、 西田佳子 価格:※ストアでご確認ください

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 当たり前のことを当たり前に主張することがとてつもなく難しいことがある。そういう時に、人は口を閉ざし、現実を仕方なく受け入れてしまいがちだ。だが、彼女は違った。2014年、17歳という最年少でノーベル平和賞に輝いたマララ・ユスフザイ氏は、どんなに身を危険に晒されても、教育を求めて戦い続けた。2013年に国際連合本部でなされた“One child, one teacher, one book and one pen can change the world.”という彼女の演説は記憶に新しいだろう。彼女はどのような経緯を経て、強い心を得たのだろうか。普段彼女はどのように日々を過ごしているのだろう。これまでの彼女の姿が描かれた本がある。

 マララ・ユスフザイ『私はマララ』には、女性が教育を受ける権利を訴え続け、イスラーム武装勢力に銃撃された17歳の少女の手記がまとめられている。故郷・スワート渓谷での彼女の生活は、タリバーンの恐怖政治によって制限されたものだった。しかし、貧困に苦しみながらも、子どもたちのためにと学校を経営する父親に勇気づけられ、彼女は学校に通い、ライバル達と日々勉学に励んでいたようだ。

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 この本を読むと、マララ氏はイスラーム教徒のごく普通の17歳の少女であることが伺える。ジャスティンビーバーの歌を聞き、映画『トワイライト』を観、色が白くなるフェイスクリームについて友達と話している。父親と母親の馴れ初めを気にしているような、普通の、女の子だ。そんな彼女が身を危険に呈してまで、教育を主張しなくてはならない現状に、胸が痛む。

 マララ氏の生活する社会では、女性が職につくこと自体珍しく、仕事をするとしても教師か医者にしかなれない。だが、マララ氏は、前は医者になりたかったが、今は政治家か発明家になりたいと語っている。すべての子どもたちにとって教育が当たり前に施されない現状やイスラーム世界における初の女性元首で元パキスタン首相のベーナズィール・ブットーに刺激を受けたらしい。身の危険を感じながらも、世の中への疑念を主張する父親とともに、マララ氏も自然に活動を始める。11歳の時には、学校に通って勉強したいという気持ちやタリバーンに対する恐怖心をブログで訴えた。次第に注目され、多くの賞を受賞すればする程、母親は彼女の命が危険にさらされることに怯えていたという。信念を通す娘を誇りながらも、複雑な思いを抱いていた両親の姿に何だか切ない気持ちになる。

 2013年銃撃を受け、一命をとりとめた後から、イギリスのバーミンガムで暮らすことになったマララ氏。イギリスの方がたとえ便利で安全だとしても、思うのは、故郷のこと。17歳の少女が強い望郷を抱きながら、教育の必要性を訴え続けるこの1冊は、今一番読むべき手記といえるだろう。


数学と物理が苦手な普通の女の子

ダンスをすることや映画を見ることが罪深いされる世の中

複雑な思いを抱えた母親と、「命を狙われることはない」と思っていたマララ

今は遠く離れてしまった故郷。skypeで連絡をとりあっているようだ