なにがなんだか分かんないことの豪壮な面白さを伝える不条理小説

小説・エッセイ

2011/12/31

審判

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : KADOKAWA
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:電子文庫パブリ
著者名:フランツ・カフカ 価格:540円

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銀行に勤めるヨーゼフ・Kはある朝目覚めると、侵入してきた男二人にいきなり逮捕される。だが逮捕状もなければ、罪名も分からない。身柄は拘束されず自由にしていていいのだが、裁判所に出頭してさえなにもはっきりせず、依頼した弁護士の活動が進んでいるのか、はては裁判が進んでいるのかどうかさえまるっきり雲をつかむようなありさまだ。Kは理不尽さへの怒りや悲しみよりも、どんどん不安になってゆく。

なにがなんだかまるで分からないカフカの傑作不条理小説。

まあ、なにが書いてあるのか考え方で少し分からないでもないのであり。たとえば私たちはある日気がつくといきなり自分が生まれている。生まれたことの理由もなければ意味も示されない。学校なんかへ出かけていろいろ学んでも生まれたわけははっきりしないし、だったらよりよく生きようとさまざまな活動をしてみても住んでる世界はいっこうにすっきりしてこない。という諸条件と、「審判」のシチュエーションはきわめて似てはしまいか。

といったからって、「審判」はわたしたちの人生の不可解さをたとえ話で書いてみせているのではないだろう。そのことをわずかに示唆する面もあるという程度。この小説にはもっと豊かな「わけのわからなさ」がこめられている。

推理小説、ホラー映画、サッカーの試合、なんだってそうだけど「分からない」ときが一番面白い。犯人どころか動機、殺害方法、はては被害者が誰なのか、なんで被害者は笑いながら死んでるのか、分からなければ分からないほど面白い。不条理小説なんてその分からないを純粋にたっぷり楽しもうって趣向だと思えばいいだけのこと。

もう一つ、どうもヘッポコに哲学じみた内容紹介に見えてしまってるのはわたしの力不足であって、Kを逮捕する二人組の会話というのが、少し注意して読めば実に滑稽なのを見逃す手はない。カフカは明らかに「笑い」を意識して書いている。笑えるようにおかしいように、細部に工夫を凝らして書いているのだ。しかつめらしい小説、そんな世間の評価をはじき飛ばしてぜひ笑いながら読んでいただきたい。


あらゆることが出し抜けに起こり、それはもう永劫に変更ができなくなる