働く女性の気持ちがリアルに描かれた短編集――日々がんばる女性にオススメ!

小説・エッセイ

更新日:2012/3/2

ガール

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : 講談社
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:電子文庫パブリ
著者名:奥田英朗 価格:486円

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「働く女性には、男性には分からない大変さがあるんですよ」なんて言ったら、今時何を言ってるのと笑われてしまうかもしれないけれど、独身でも既婚でも、やっぱり女性が働くときには、男性には分からない悩みや葛藤があるのではと思ってしまいます。

そんな女性の気持ちがリアルに描かれた短編集「ガール」。作者の奥田英朗さんは、女性が職場で直面するであろう、さまざまな出来事を、女性と男性の視点をバランスよく混ぜて、描き出しています。

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本書に収められているのは5作品。各々の作品の主人公は、既婚、独身、シングルマザーとそれぞれなのですが、皆、30代前半から半ばで、仕事である程度の実績を収めている、いわゆるキャリアを積んだ女性です。

大手不動産会社で課長職を命じられた女性、大手生保の広報課勤務、広告代理店勤務等、一見華やかな経歴を持つ彼女たち。キャリアとしては申し分なく、傍から見れば、ちょっとうらやましいような女性たちなのですが、日々、オフィスで彼女たちはさまざまな出来事に遭遇し、悩み、そして悪戦苦闘して解決を図っていきます。その彼女たちの姿には、どんな立場で働く女性でも、共感する部分が何らかあるのではと思うのです。

本書のタイトルにもなっている作品「ガール」を読んでいて、すでに物語の主人公よりも年上の私“ぷりまべら”は、「ガール」の意味するところがわかるくだりで、「なるほどねぇ」とちょっと複雑な気持ちになりつつも、妙に納得してしまいました。

本作は、2003年から2005年に「小説現代」に掲載されたもの。当時私は、物語の主人公と同年代だったわけでして、そのときに本作を読んでいたら、「その気持ち分かる~」とより強く思ったことと思いますが、現在読んでも、そのおもしろさは半減しません。

どの作品も、主人公が明日への一歩を踏み出せるような、すがすがしいエンディングが用意されている点も本書の魅力。30歳以上の女性には特にお勧め、そして、そんな女性と職場を共にする男性にも、是非読んでもらいたい1冊です。

タイトルからは内容が想像できそうにありませんね。「マンション」は少しは想像できるかな?

課長職を命じられた聖子は、年上の男性部下を持つことになります。自分の歓迎会で、お勘定をどうしようかと悩みだす聖子。こんな些細なことが、気になりだすのです