『警察』という組織の中でクールなニューヒロインが事件に挑む

小説・エッセイ

更新日:2012/3/2

ストロベリーナイト

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : 光文社
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:電子文庫パブリ
著者名:誉田哲也 価格:630円

※最新の価格はストアでご確認ください。

ある溜池の近くから発見された、ビニールシートに包まれた男の惨殺死体。不可解な死体の遺棄場所、残虐な殺し方。謎が多い死体に警察はお手上げ状態だった。

そんな中、警視庁捜査一課の警部補・姫川玲子はある事実に気がつく…。

advertisement

刑事ドラマが増える昨今、この作品も2010年にはスペシャルドラマ化され、2012年に連続ドラマとして放送される。

冒頭からグロテスクな表現に、思わず戸惑ってしまうが、リアルゆえにグッと引き込まれてしまう。想像できやすいので、繊細な人には要注意のシーン続出、だが。冒頭の殺人シーンは姫川が担当する事件にどのように関わっていくのか。ワードの全てが事件解決への鍵となる。

登場人物は誰をとっても、人間臭くて魅力的だ。主要人物たちの心情描写が多いため、読んでいる側としてもキャラ付けがしやすい。ヒロインである姫川玲子が強くはかなく、クール。刑事の仕事が好き、見合いをしろ、と迫ってくる両親と過ごすよりは殺人事件の犯人を追っかけている方がマシ、と事件が起きるのを心待ちにしてしまうところが若干不謹慎だけど、ヒロインらしくなくていい。

また、おもしろいと感じたのがあまり「いい人」がいないのだ。「いやいや、警察権力を笠に着すぎじゃないか?」とか「被害者の遺族に対してそんなふうに思っちゃダメなんじゃ…?」と読んでいる側が余計な心配をしてしまうようなことをキャラクターたちが考えているのだ。しかし、きれいごとばかりを並べるよりはずっと現実的で、そんな心情描写がより事件をリアルなものにする。

犯人探しを読者が一緒にする、という点に関しては、姫川が『勘』で行動し、そこから事件が急展開したりして若干ついていけない部分もあるが、それがいい意味で読者を裏切り、また惹きつける要因となっている。

また、警察の捜査方法がかなり詳しく書かれているのもおもしろいところ。被害者の人間関係を洗い出し、被害者を殺害する動機を持っている人物を探す作業を『敷鑑(識鑑)』と言うらしいが、ドラマなどを観るだけではあまり分からないものだ。警察用語をチェックしつつ読むのもおもしろいかもしれない。

正直、最後まで私は物語の結末が予想できなかった。殺人の動機は一体何なのか。

殺される前の被害者たちが行っていた秘密の行動とは?

そして、お見合いを勧められまくりのアラサー姫川の今後も気になるところである。

こんなセンテンスから始まる本作品。冒頭から緊張してしまう

長編作品は黒地に白文字が読みやすいかも

今回は目次がなかったのでしおりが大活躍。最初に第一章、第二章…としおりでチェック