旅紀行のような、それ以上のような、角田光代が贈る旅物語
更新日:2014/11/14
降り積もる光の粒
ハード : | 発売元 : 文藝春秋 |
ジャンル: | 購入元:KindleStore |
著者名:角田光代 | 価格:※ストアでご確認ください |
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角田光代といえば芥川賞候補にもなった作家なので、このタイトルでなにか真摯な家族小説かな、などと勝手に想像したのですが、嬉しい裏切りに合いました。内容は作家の旅エッセイ。取材旅行でも、そして一人旅でも友人との旅行でも年に数回は忙しい日常を縫って旅に出るという彼女の旅物語は、鈍行列車に乗るようなスビードで展開してゆきます。
決して急がず、現在のテクノロジーを駆使すればいとも簡単に分かる情報、観光地も時にスルー。作家が旅で見つけるのは、その土地の人々の小さな習慣や、一瞬の会話、自分とは違う日常と人生を歩んでいる人たちとの、ほんの少しの触れ合い。それらの体験が旅行後に「きらきらと光を発しながら自身の身体のうちに降り積もっている」、ことからタイトルができたわけ。こういうミクロの眼を持っていれば、海外まで出なくとも、極端にいえば国内や地元の知らない一画ですら楽しめてしまうのでは、という印象。
そして緻密な文章の作家の、意外にぼんやりとした無責任な旅の仕方に共感を覚えていると、後半はアフリカ、マリのレポートの章に。ここでは完全に彼女の旅は「仕事」となり、女性器切除廃止運動のボランティアについてまわる。その時の観察眼は作家のそのもので、前半のぼんやり旅と同人物かと思うギャップが面白いです。そしてアフリカ迄来て感じる「遠い」と「いることを許されている感覚」についての観察も秀逸。普遍的な旅の「あの感じ」を端的に表現してくれる小気味よい文章に、読後も旅のあとのよう。
どう読んでも、実際の旅の参考には全くならない一冊ですが(笑)、「いいね!」な感じ。旅に出る前に読んだら、もっと自分の中の様々なものに繊細になりそう。女性にお勧め。
彼女が旅で必ず合う「神様」がいると
作家も普通に駅弁で悩み苦しむ
のんびりな視点から一転、アフリカのマリへ取材旅行に
旅の土地で感じる違和感についての考察。するどい