ウンチクのみならず、ガイド機能にも長けた資料価値の高いショコラ本

公開日:2011/11/3

高級ショコラのすべて

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : PHP研究所
ジャンル: 購入元:電子文庫パブリ
著者名:小椋三嘉 価格:650円

※最新の価格はストアでご確認ください。

パリでは、10月20日~24日の5日間、今年で17回目を数える恒例のショコライベント“SALON DU CHOCOLAT 2011”が開催されました。例年通りの盛況を博したこの見本市、通年はパリを皮切りに、年明け早々には日本へ上陸。バレンタインの時期に合わせて、伊勢丹の本店&支店で開催されるのですが、毎年来場者数が右肩上がりだとか。目玉イベントのひとつだけあり、第10回目を数える予定の来年も、間違えなく開かれることでしょう。

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今年は、“SALON DU CHOCOLAT 2011”をもうちょっと違う角度で楽しみたいな、と思い立って購入したのがこの1冊。予習復習に、とピンポイントでこのイベントを思い浮かべてのお買い物でしたが、読みながらふと考えてみるとフランスでは多くの年中行事にショコラがリンクしているんです。例えば、クリスマスのビュッシュ・ド・ノエル、バレンタイン、春のイースター、この辺りはきっとショコラ界の三大イベントと数えられるのでは。名店が競い合うように、その年の新バージョンを発表するイベントが目白押しなのです。無論、固定ファンは季節を問わず、自分用、またはプレゼント用としてショコラティエを重宝。一年を通してショコラ需要はハイスコアをキープしているように思います。

一方で、日本はここ10年余りの間に、世界でもトップクラスのショコラ市場に。フランス圏を筆頭に、世界中の有名ショコラティエが続々と日本へ進出しています。飛行機に乗らずとも、名店の逸品を手にすることができる、なんとも恵まれた環境にあるわけです。マニアなファンも多いショコラ界ですが、初心者であっても若干の知識を備えて味わうと、普段のチョコがまた違ったニュアンスの代物になるはず。

この本は、ショコラの用語解説や著者の流儀(テイスティング方や評価する際のポイント)に加え、後半には「ミカのアドレス帳」を収録。著者が贔屓にする国内外のショコラティエをガイドしているこの章には、かなりの数のお店の情報が詰まっています。用語解説とこのガイド部分の情報量の充実度を考えると、資料的価値の高い“買い”のショコラ本と言えるのでは。一気に読まなくとも、気になった時にパラパラ読み直す、そんな風に役立ちそうな1冊です。

ただ、電子書籍の構造に数カ所、こうだったら使いやすいのにと、個人的に思った改良の提案点も。例えば、随所に写真が収録されているのだけれど、ページをまたいでしまっていたり、ガイド部分の各店のデータ欄には、それぞれのホームページアドレスも記されているのだけれど、そこに飛べない。電話番号や住所などもそうだけれど、タッチするだけでコールできたり、マップに飛ぶといった、電子書籍ならではの可能性ががもっと開拓されれば、資料価値も購買価値も上がるはずなのにな、と。今後に期待したいところです。


ショコラの写真も随所に。とくに巻頭のカラー写真はいい、のだけれど、写真とコメントがどうしても別ページになってしまうのが残念

目次の構成がとても細かい。全5章からなるのだけれど、それぞれに収録されているタイトルの数は相当なもの

この「ミカのアドレス帳」の情報量もなかなかのもの。ニューカマーが年々増えていくとはいえ、ある程度の新旧をカバーしています