路上生活より過酷な彼女たちの生。これがいまの日本の現実なのか?

更新日:2015/9/29

最貧困女子

ハード : 発売元 : 幻冬舍
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著者名:鈴木大介 価格:※ストアでご確認ください

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 軽い気持ちで読み始めたが、こんなに暗く救われない思いにとらわれるとは…。最貧困女子。この本でそう呼ばれているのは、低所得に加えて、家族の無縁(助けてくれる家族親戚がいない)、地域の無縁(苦しい時に相談できる、助言してくれる友人、知人がいない)、制度の無縁(生活保護など、社会保障制度から漏れてしまっている、または制度そのものを知らない)の「三つの無縁」と、精神障害、発達障害、知的障害の「三つの障害」がさまざまに重なり合って、困窮を極めた生活を送っている女性のことであり、そしてそれはセックスワークの最下層で生きる10代から20代の女性たちとぴたりと重なる。

 セックスワークの最下層、つまり生活のために、その日の寝場所、食べ物を確保するために、身を売って生きている少女たちがいるということに、まず衝撃を受けた。なんでそんな状態に陥るのか。彼女たちの生い立ち、堕ちていく過程はほぼ似通っている。たいてい家出をしてセックス産業に取り込まれ、そこから抜けられなくなっていく。一見「自己責任」と切り捨てられかねない状況だ。家出少女=非行少女で、元々素行が悪いのだから、そういう最低の世界に堕ちていくのはしょうがない。自業自得。そういう論調が世の中の主流だし、現に私もそう思っていた。

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 だが、筆者は丁寧な、そして丹念な取材を通して、なぜ少女たちが非行に走り、札付きの悪ガキ(!)と化し、ついには家出してセックスワークを選んでしまうのか、そしてそこから抜け出せず、最下層に沈んでいくのかを、詳細に明らかにしていく。あまりにも悲惨で壮絶な世界…。実際に見て聞いた筆者の衝撃とは比べ物にならないけれど、それでも読むだけでぐったりする。とてもそのまま放置しておくわけにはいかない! が、しかし…。いったいどうやって、彼女たちを救い上げればいいのか? その問いはあまりにも重い。

 最貧困女子という、まるで戦後の赤線みたいな状況下で生きている女性が、この平成の日本に存在するというきつい現実。彼女たちの10年後、20年後を思うと、本当にやりきれない。ずっと身を売るために街に立ち続けるのだろうか、それとも、年をとり、売れるものがなくなり、本当のホームレス(見えるホームレス)となってやっと、社会的支援が受けられるのか…。粗野で攻撃的、自分から社会との縁を断ち切ってしまう、普通の会話が成り立たない、めんどくさくて可愛くない彼女たち。その圧倒的な不幸、孤独が見えにくい彼女たちの「現実」を、興味本位の差別の目ではなく、冷静で公平な目で見つめる、そのきっかけを与えてくれる真摯な一冊。


この先を読むまで、私もそう思っていた。まさかその裏にこんな悲惨な状況が隠れていたとは…

一晩の宿のために身体を売る。いったいいつの時代の話しなんだ?

立ちんぼ女性、それも都内…。まるで外国のことのようだ

知的障害をもった女性たちが最底辺のセックスワークについている現実。障害者手帳を持っていながら堕ちていく彼女たち。障害者は社会保障制度できちんと守られているのだとばかり思っていた。信じられない…

次々にそして淡々と語られる、最貧困女子たちの状況。あまりの悲惨さに涙…