命の根が深くなる。厳しくも救われる。相田みつをの魂の書詩
更新日:2011/9/12
言の葉、言の幹、言の根。
みつをさんの言の葉は、幹と根に繋がっている。
氾濫するノリとソリだけのTwitter的な言の葉。
傍観する批判と憐憫だけのマスコミの言の葉。
そんな根なし言葉に食傷ぎみな現代人は必読だ。
一点一画に込められた書を見つめられるだけで、
あなたの命の根っこは、もっと深くなる。
「にんげんは、逆立ちした樹である。」
そんなの通説の如く、
氏の言葉は、根と幹から生えている。
氏の言葉は、厳しくも静かに響いてくる。
ある時は、心をかきむしるような懊悩に、
優しく寄り添う葉のように。
ある時は、相対分別にぶれまくる姿勢を
厳しく正す警策棒のように。
そして
ある時は、表層即応する浮薄な心根を、
じっくりと大地に根付かせるように。
ゲーテ流形態学の継承者であった三木成夫さんは、
植物と動物(にんげん)の形態形成原理の特質を
「内向閉鎖系」と「外向開放系」に対比した。
養分と光を摂取する葉と根。
地球の求心を貫く力線にみごとに対応した体幹。
季節にしなやかに照応する開花結実の運動極性。
相田みつをさんは、まるで森の大樹が諭すように、
閉鎖的で内向的になりがちな現代人の心身を、
空と地面、天と地に向かってほどいてゆく。
「じっくりと伸びやかに生きていいんだよ」。
「グチはいわないで
精一杯、じっくり花をさかせましょう」。
にんげんの弱さと、にんげんの可能性を知る
森の聖人、大樹の箴言を静に読み聴くだけで、
森林浴をしたように、全身に呼吸が巡りだす。
書から沸きたつ力は、iPhoneでも変わらない。
Twitter疲れ、TVショー疲れの人は必見である。
書に見つめられるだけでなく、詩に語られる。「人間にはあまりにもうそやごまかしが多いから 一生に一人は ごまかしのきかぬ人を持つがいい」…。大坂志郎さんの朗読で迫ってくる相田みつをさんの言霊は、おてんとさまのように、私たちの心根を見透かしている
「つまづいたっていいじゃないか にんげんだもの」。この言霊が、動きたくても動けない、つまづきたくてもつまずけない、植物から発せられたと考えてみてほしい。生息圏を自由に移動する方向へ進化を選択した動物(人間)は、つまづくことを引き受けたいきものなのだ
その結果、植物には体験できない「つまずき」と「新しい風景との出逢い」を、自覚的にひきうけられるのが「にんげんだもの」。動く・物。動物という漢字は、あらためて、その悟性をよく表している
書は、「書く者」と「見る者」をいま・ここでつなぐ力を持っている。さらに、相田みつをさんの書は、「書く者(みつをさん)」と「見つめられる者(わたし)」と「見つめるもの(命のバトンに参加したすべてのいきもの)」。三者を永遠の中の刹那でつなぐ結節点として呼吸している。小学時代に書道を習った身としては、みつをさんのすずりと墨の匂いを嗅いでみたい。スマフォの次の開発課題は、匂いである