【ダ・ヴィンチ2015年2月号】今月のプラチナ本は『キャプテンサンダーボルト』

今月のプラチナ本

公開日:2015/1/6

今月のプラチナ本

あまたある新刊の中から、ダ・ヴィンチ編集部が厳選に厳選を重ねた一冊をご紹介!
誰が読んでも心にひびくであろう、高クオリティ作を見つけていくこのコーナー。
さあ、ONLY ONEの“輝き”を放つ、今月のプラチナ本は?

『キャプテンサンダーボルト』阿部和重、伊坂幸太郎

●あらすじ●

小学生時代、同じ野球チームだった相葉時之と井ノ原悠。各々の理由で人生に行き詰った二人の男は20代後半で再会し、命を危うくするトラブルと、一獲千金のチャンスに巡り合う。東京大空襲の夜、密かに東北の蔵王に墜落したB29。公開中止になった、幻の特撮ヒーロー映画。日本中を震え上がらせた、致死率70%強の伝染病。そして恐るべき破壊者と、これらの謎を探る一人の女。すべてが絡み合い、謎が解けたとき、動き始めたものとは─。現代を代表する人気作家二人のすべてが詰め込まれた、渾身のエンターテインメント大作。

あべ・かずしげ●1968年生まれ。山形県出身。94年、『アメリカの夜』で第37回群像新人文学賞を受賞し、デビュー。『グランド・フィナーレ』での第132回芥川賞など、受賞歴多数。他の著作に『クエーサーと13番目の柱』『ピストルズ』『□(しかく)』などがある。

いさか・こうたろう●1971年生まれ。千葉県出身。2000年、『オーデュボンの祈り』で第5回新潮ミステリー倶楽部賞を受賞し、デビュー。『アヒルと鴨のコインロッカー』での第25回吉川英治文学新人賞など、受賞歴多数。他の著作に『死神の精度』『PK』などがある。

文藝春秋 1800円(税別)
写真=首藤幹夫 
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編集部寸評

 

そうだ、われわれは冒険に出たかったのだ

今、ネット上にあふれる陰謀論の大半がつまらない。「この陰謀のせいで、おれは損をしている」という被害妄想ばかりだからだ。だがわれわれ“冷戦時代の子どもたち”が本当に子どもだったころ、陰謀には最高にわくわくさせられた。謎の組織、隠ぺいされた事件、幻のフィルム……その先には、間違いなく冒険が待っていたのだから。そんな冒険への希求を胸に秘めたまま大人になり、損得勘定とルーティンワークの足枷をはめられたわれわれの前に、本書は届けられた。ここには冒険がある。ともに冒険する友がいる。B29が、トランザムが、犬が、破壊者が。あとはページをめくるだけで、二人の主人公とともに走り出せるのだ。ものすごく読みやすく、かつ密度の高い文章には、純文学とエンターテインメントの融合の極みが表れている。研ぎ澄まされた言葉(特にセリフ!)の奔流に身をまかせよう。

関口靖彦 本誌編集長。宇野常寛さんの本誌連載が単行本にまとまりました。『楽器と武器だけが人を殺すことができる』。タイトルどおりの挑発的・挑戦的なカルチャー評論、ぜひ読んでみてください

 

著者二人の執筆時のワクワク感が伝わってくる

人気作家の合作小説なので、合作の経緯や執筆スタイルも気になるところだと思うが、まずは頭を真っ白にしてなんの先入観もなしに一読することをお勧めする。これまでの人生経験や触れてきたカルチャーによって、「おっ!」と反応するところは人それぞれだと思うけれど、この高揚感、爽快感、読んでよかったと思える満足感はきっと万人に訪れるはず。さすが合作と思ったのは読みやすく入りやすいエンタメであるのに、味わいがとっても濃厚であること。ストーリーを形作るさまざまな要素に対する阿部さん、伊坂さんのこだわりと、制作過程におけるそれらと物語の馴染ませ方が絶妙で、合作ゆえの検証がこういうところに効いているのだと思った。胸熱くなる各種名言も多数。年初の一冊として、この中から2015年の指針となる言葉を選んでみるのもいいかもしれない。

稲子美砂 1月15日に角川つばさ文庫から『主人公はいつも君』が発売に。2006年刊『メイク・ア・ウィッシュの大野さん』を子供向けにアレンジしたものです。編集作業をしながら何度も涙した良書、ぜひ

 

とにかく楽しい! ドキドキワクワクが詰まってる!!

純文学の阿部さん、エンタメの伊坂さん。最初、ここはどちらが書いたのかな?と想像したが、それも束の間。すぐに、それを探ることは忘れ、物語の面白さに飲み込まれてしまった。借金を抱えた男二人が、一攫千金を狙う過程で遭遇するトラブル。墜落したB29、鳴神戦隊サンダーボルトに御釜の水といった一見関連性のない怪しいキーワードの数々。一体何の関係が!? 散りばめられた伏線が回収されていく過程に大興奮した。そして物語を引っ張る主人公二人の関係もいい。同じ野球チームで特撮ヒーローに憧れる少年時代を過ごしても、大人になって立場や環境は当然変わる。でも底にはあの頃のやんちゃな二人がいる。小説に、純文学もエンタメもない。面白い小説があるだけだ。作家二人が、やんちゃな少年のように面白がりながらそれを証明してくれたような作品。絶対読むべし!!

服部美穂 本と住まう特集で、建築家の永山祐子さんの理想の部屋に夢ふくらませ、東京R不動産取材でリノベ物件について相談した後、我が家の惨状を見てはがっくりしてました。年末は大掃除します!

 

映画化希望、最強合作エンタメ小説!

水をめぐる陰謀、公開中止になった幻の戦隊ヒーロー映画の噂、東京大空襲でなぜか東北の山に墜落したB29の謎とその山の沼周辺に広がった村上菌の真相。12年ぶりに再会した元野球少年の相葉と井ノ原の名コンビが、東北を舞台に疾走する様子は、スリリングでスピーディーなロードムービーを観ているかのよう! 次々と明かされていく謎と、男二人(と犬)の冒険劇は、とにかく爽快! 人生悪くないなぁと思わずにはいられない、かつて少年だった大人たちに特におすすめの一冊です!

重信裕加 年の初めに読んでほしい本が満載の「立ち読み! レコメンド」「七人のブックウォッチャー」もぜひチェックしてください!

 

お金を払う価値あるエンタメ!

ただただ楽しかった。阿部さん伊坂さんの言うところの「冷戦時代の子ども」である私は、スパイや陰謀うずまく物語が大好き。そんな大好物がてんこもり、なおかつ極上エンタメに仕上がった本作が楽しくないはずがない。小説に求めるものは人それぞれだが、私はスパイ、医療、スポーツ青春……ジャンルは違えどドキドキハラハラさせてくれるエンターテインメントが好み。そんなエンタメ好きな人には本当にオススメ! きっと書店で買って手元に置きたいと思うんじゃないだろうか。

鎌野静華 ドルトムントへCL観戦に。スタジアムとサポーターの雰囲気に大感動! 丸岡選手に写真撮ってもらっちゃいました

 

バディもの、わくわくします!

男ふたりが事件に巻き込まれ……というバディもの、わくわくしっぱなしの弩級エンタメ。相葉も井ノ原も金が必要、という事情から始まるものの、さまざまな謎(その土地に秘されたものとは?桃沢の父が探っていたのは?敵の目的は?などなど)に牽引され物語はどんどん進む。伏線回収のカタルシスもてんこもり。合作と気にする余裕もなくのめり込んで読んだ。ふたりが補い合って立ち向かう様子は萌えます。そして読み終わったあと、著者ふたりがどうやって……と考えるのもまた楽しい。

岩橋真実 青山裕企さん、岩井志麻子さん、雪舟えまさんのメルマガが「ブロマガ」にひっこしました。試し読みもできるのでぜひ

 

世界は地味に救われ続けている

『あまちゃん』が大ヒットし、楽天イーグルスが日本一に輝いた2013年は東北の年だった。しかし、本作版の13年ヒーロー、相葉時之と井ノ原悠はともに借金を背負うさえないアラサー男子。はっきり言って地味である。けれど、かつて少年野球チームのエースとキャプテンを務めた凸凹コンビは二人揃うと不思議な力を発揮する。パワーに欠ける13年楽天打線が豪腕の外国人投手をあの手この手で攻略したように、舞台となる宮城と山形を全速力で駆け抜けるのだ。著者の地元愛が炸裂した最高傑作。

川戸崇央 東北出身の阪神ファンとしてはフクザツなラスト。マー君の後継者・則本昂大を打ち崩しても、助っ人が打たれた6月3日

 

男同士の友情って羨ましい

人気作家2人の完全合作は、超エンタメ作。両作家の持ち味たっぷり、スピード感たっぷりに物語は展開されていく。散りばめられた謎がラストに向けて、主人公の相葉、井ノ原らによってきっちり回収されていくが、その冒険過程がかつて野球少年で同級生だった2人の成長物語でもある、というところがとても気持ち良かった。男性同士のスマートなくせに根っこには熱い信頼感がある、そんな友情って羨ましいな〜と女性の私は思う。「大人」になった彼らの言葉に、ぐっとくる場面も多々あった。

村井有紀子 お正月は半年前から予約した温泉旅館でしっぽり、蕎麦を食べにドライブ……のはず。仕事入りませんように※現在12月

 

今、日本で最も格好良い小説!

もしも自分が文芸編集者なら、いや編集者でなくとも、当代人気作家を引き合わせ合作を書かせるという妄想を一度はしたことがあるかもしれない。それを見事に体現しているのがこの作品だ。当然のこと小説自体も文句無しにカッコイイ。主人公の青年二人の溌剌とした姿に、大人になった彼らを支えるものは、大人になる前の彼らしか居ないのだということが切ないほど伝わってくる。読むべき本が見つからない、最近面白い本がない、と嘆いている人がいたらこの本を真っ先に差し出したい。

佐藤正海 今月号、初めての特集を担当しました……。この歳で覚えることが沢山あるって本当に素晴らしいことですね

 

とんでもなく純粋な、楽しさ

小学生の頃、夏休みに部屋にこもり『ドラゴンクエスト』をやっていた時のような、底知れない昂揚感を思い出す。巨大な陰謀に冴えない二人が立ち向かう様は、まるでアメリカ映画のようだった。いい歳をした主人公二人だが、特撮ヒーローのカッコ良さにいまだに目を輝かせて、命運すら危うい状況でもジョークを飛ばす。月並みだけれど、この「なりきれない」大人の姿もたまらなく魅力的で、夢中で読まされた。著者二人が、膝突き合わせ執筆する姿が目に浮かぶ。「楽しかった」の一言!

鈴木塁斗 マンガ家さんとのマンガ談義は本当に楽しい。今月のコミック ダ・ヴィンチはコミティアミニ特集。要チェック!

 

過去のプラチナ本が収録された本棚はコチラ

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