「ハゲ」を通して、自分自身の幸せのモノサシについて考えさせられる

更新日:2011/9/12

ぼくらはみんなハゲている

ハード : iPad 発売元 : OHTA PUBLISHING COMPANY
ジャンル: 購入元:AppStore
著者名: 価格:1,000円

※最新の価格はストアでご確認ください。

「ハゲ」を通してニッポンの社会を詳らかにしたドキュメンタリー番組を観る感覚で読み進みます。表紙の可愛げなイラストと本書の内容はイメージが違うことに驚かれる読者の方も多いかもしれません!
  
ふとけんは主にビジネス系のレビューを中心に執筆させてもらっていることもありますが、「ハゲ」をはじめ、「ブ○」「デ○」「チ○」などに代表されるコンプレックスを持った人々をターゲットとするビジネスは、考察(?)対象としては非常に興味深いものがあります。

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本書でも気になったのは、第2章の後半に登場する「ハゲがお金に変わるまで」「ハゲでご飯を食べる人」「ルーツ」などの部分。日本で毛髪関連サロンが日本に初めてできたのは1965年で、アートネイチャーが麹町で開業したことに始まるそうですし、アデランスやアートネイチャーの創業者たちがもともと在籍していた大阪の女性用カツラメーカー「ボア・シャポー」に、今の日本の毛髪業界のルーツがあるといいます。またアートネイチャーを相手に裁判を一人で起こした人の話「カツラ裁判」や、毛髪業界がどのような強引なセールスで成長してきたのか、また最大限活用してきた広告の手法など、負の部分も含めて勉強になる部分も多いです。
  
一方、髪の毛の後退を家族から指摘されたとは言え、お試しでもまだ(?)カツラを使ったことがないふとけんにとっては、当のユーザー(カツラーと呼ぶらしい)の生の声にはとても興味を持っています。その意味では「カツラは麻薬です」「「カツラー」という生き方」「ハゲてないハゲ」「「ハゲ」と「非ハゲ」の境界線」「「悩み無用」の真実」など、そそられる、魅力的な見出しが満載されています。
  
人は常にコンプレックスを抱き、それを乗り越えようとして戦っています。そこに商機を見出してビジネスをする人が次々と新たな「商品」を考え、時に成功し、時に失敗します。「商品」でコンプレックスを克服できた人は自信がつき、人生が楽しくなります。一方、「商品」をつけていることを知られたらどうしよう、とビクビクしながら過ごしている人もいます。「商品」には最初から手を出さず、開き直ったことで気持ちが楽になって幸せに生きている人もいます…。
  
ふとけんが思うに、幸せのモノサシは自分自身の中にあります。本書はハゲやカツラの話を通して、自分自身の幸せのモノサシについて、考えるきっかけを与えてくれます。人の意見や他人の目に振り回されてしまうな、と感じたことがある方には、ぜひご一読をお勧めします。

本書にはプロローグとエピローグが記されていますが、ふとけんが一番共感したフレーズを、エピローグから紹介します。「なぜ、僕らはハゲゆくのか? それは「許す」ことを学ぶためではないだろうか。ハゲとは完璧でない誰かを許し、完璧でない自分を許すための試練なのではないだろうか」。身体的なことはネガティブなコンプレックスになりやすいですが、前向きにとらえて許し、開き直れる力の大切さに気づかせてくれます

四捨五入でギリギリアラフォーなふとけんは、先日、大学生の娘から「オヤジ、最近、髪の毛薄くなったんじゃね? ブラマヨの小杉的な感じになってきたし」と言われました…。髪の毛関係は誰かをいじるときのネタにされやすいのですが、素敵に見えるのは「ハゲだけど、何か?」「カツラつけてるけど、何か?」と堂々と言える人、自分の身体的特徴とがっぷり四つに組んで生きていける人だと思います。コンプレックス、カミングアウト…カタカナが意外と登場しますので、検索機能が活躍するかも

デフォルトの設定で1251ページ、文字を最小にしても492ページというボリュームの「大作」ですが、TVディレクターが著者であるためか、ルポライターやノンフィクションライターが書いたものとは、かなり趣向の異なる文章が楽しめます。そしてこのボリュームにもかかわらず、シンプルな構成! 本文は『第1章 「ハゲゆく人々」との出会い』『第2章 誰がハゲを惑わせる?』のたった2章から構成されているのです。もくじのタイトルも秀逸です。TVマンっぽさが滲み出ていて、楽しいのです