「官僚主義萌え」を凝縮! 今までありそうでなかった、後方支援が主任務の「兵站軍」による仮想戦記!
更新日:2015/1/19
作者の速水螺旋人氏は、常々「官僚主義萌え」を主張していらっしゃいました。なんでも、組織的な不条理を垣間見るのが大好きで、その不条理さの中に人間社会的なモノを感じるから、ということで。そんな速水先生の萌えがここぞとばかりに凝縮された作品が本作『大砲とスタンプ』です。
「当人たちは合理的に動いているのだけれども全体としてみたら不条理極まりなくなっていた」という所を描いていきたいという抱負の通り、「艦に積んだ糧食は送物資だから食べるの禁止」「反撃用の弾薬を使い切ったので反撃禁止」など、「お役所仕事ぶり」をコミカルかつ痛烈に表現した作品となっています。
マルチナ・M・マヤコフスカヤ少尉が所属する「兵站軍」は、輸送や補給などの後方支援を担当する部隊。デスクワークが多いこともあり、陸・海・空軍からは「紙の兵隊」と嘲笑われることもしばしば。けれどここが機能していなければ軍は早晩瓦解してしまうであろう、最も重要な部隊でもあります。しかしマルチナが配属された前線のアゲゾコ要塞は、予算は瀕死、壊滅的な機能不全と汚職が横行するとんでもない職場だったのです。
着任早々テロリストに襲撃されたり、汚職を摘発した上官から戦車で市街地を追い掛け回されたりと散々。その後も、金策に走り回って列車強盗を起こしたり、要人接待していたはずが何故か敵国の特殊部隊とドンパチしたり、前線基地から敗兵を集めて撤退したりと、マルチナは波乱万丈な軍人ライフを送ることに…
本作の見所はなんといってもマルチナの「熱血官僚主義」。終わりよければすべてよし、帳簿があっていれば問題ナシ、とばかりに書類絶対主義を貫く姿はいっそ清々しい。特別任務のために拠点に贈った戦艦が敵の攻撃で撃沈されても、引渡し後に撃沈されたのなら、特別任務は書類上終了しているので問題なし! など、見事に徹底しています。
「緊急事態発生!」で3巻が終わり、4巻では果たしてどんな風雲急を告げる事態が起こるのか…続刊の早急な電子書籍化が待たれます
食料があるのに食べられない。融通がきかないはお役所仕事の代名詞?
「書類で戦争ができるか」「書類で戦争をしてるんですッ」言い切りましたねマルチナさん!
他人から見れば「兵站軍」でひとくくりでも、中の部署は違うもので。部署違いの謝罪は誠意がないとバッサリ拒否のマルチナさん流石です
ほのぼのした絵柄に騙されてはいけません。これは戦争ものなのです。気づくと人が死んでいた、というのは結構怖かったりもします