顎クイ、床ドン、肩ズン…日々の不足しがちなときめきの補給に、まずは手軽な「壁ドン」はいかがですか

公開日:2015/1/26

きみと壁ドン

ハード : 発売元 : 講談社
ジャンル: 購入元:KindleStore
著者名:渡辺あゆ/Ishiko/清野静流/叶のりこ/三生まなみ/るかな/もすこ 価格:※ストアでご確認ください

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 このアンソロジーのタイトルになっている「壁ドン」とは、うるさい隣人に対しそのイライラを伝えるために壁をドンッと叩く行為のことではない。知らない間に「こっちの方が本家本元ですが?」的な顔をして広まりはじめ、気が付けば2014年の流行語大賞のトップテンに入ってしまった、「男子(イケメンに限る)が女子を壁際にドンッと手をついて追い詰める」行為のこと、である。

 流行りすぎた挙句にこうして「壁ドンシチュエーション限定のアンソロジー」までできてしまった。今や壁ドンすら古いと言われ、ネットでは「今は壁ドンではなく顎クイ」「いや床ドン」「いやいや肩ズン」……と、日々勝手な妄想シチュエーションのワンダーランドが展開され続けている。イケメンの中のひとは大変ですなあ。

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 さておいて。このアンソロジーには、「壁ドン」のシチュエーションが爆発的に広まるきっかけになったらしい『L・DK』のスピンオフ短編をはじめとした人気連載作品のスピンオフや、素直になれない幼馴染たちの「ザ・少女漫画」な短編、ちょいエロと言いたいところだけれどもはや結構なレベルのエロなティーンズラブ作品、ものすごい変化球のギャグ作品まで、実にバラエティに富んだ作品群が掲載されている。

 正直「イケメンに壁ドンされて喜ばない女子なんかいません!」と言わんばかりの、世の中の「イケメンが壁ドンするシチュエーションと、それにきゃーっと黄色い声をあげる女子」のテンプレ的な使い方には食傷気味だった私にも、ちょいちょい萌えるシチュエーションがあった。今でこそ斜に構えた読み方ばかりする、ひねくれねじまがったマンガ読みの私だが、もともとの原点は少女マンガ読みだったのだ。これだけ多種多様な設定とシチュエーションをごった煮にしたようなアンソロジーを出されたら、そりゃどれかはツボにはまっちゃうに決まってるじゃないかという話なのだ。

 このアンソロジーは案外、少女マンガどんぴしゃ世代な10代女子よりも、私のように多少ひねくれて「いまさら少女マンガなんてこっ恥ずかしくて読めないよ」と苦笑いするような、過去に女子と呼ばれていた人たちの方が楽しめてしまうのかもしれない。思わぬ「きゅん」に出会えて、今でもふつうに少女マンガにきゅんっとできてしまう自分にどぎまぎしてしまうかもしれない。レッツジョイナス、日本ときめき党。


冒頭の解説文(読めるかな……)。「乙女のあこがれ」ですってよ、奥さん

知らないタイトルのスピンオフでも、冒頭に説明がついているので安心

応用系の「壁ギュ」ですってよ、奥様

個人的にこういう「ボーイッシュすぎて初対面だと男の子に見られる」ことがコンプレックスの女の子の話が大好物でして

個人的に大好きな変化球のギャグ枠。コミックス出たら買おう……