一億総情報発信者時代に考える、感染的コミュニケーションへの予防策は

公開日:2011/9/4

検証 東日本大震災の流言・デマ

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : 光文社
ジャンル: 購入元:電子文庫パブリ
著者名:荻上チキ 価格:599円

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「コスモ石油の工場爆発により、有害物質を含んだ雨が降ります! 一刻も早くみんなに広めてください!」
  
「東京電力の社員を装った人物が徘徊し、女性宅に押し入りレイプしています。一人暮らしの女性は絶対に外へ出ないで!」
  
これは、3月11日の東日本大震災以後に私が不本意ながら受け取ることになったツイートやチェーンメールの一部です。ほかにも「放射性物質にワカメや昆布が効く」、「天皇陛下が京都へ避難した」、「避難所で子供が餓死した」など、様々な流言やデマが世間を飛び交いました。

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大災害と流言・デマは切り離せないもの。古くは、関東大震災の際に、「朝鮮人が井戸に毒を入れた」というデマによってたくさんの人が殺されたという歴史があるそうです。
  
mixi、facebook、Twitterなどでのコミュニケーションが一般的となり、誰もが不特定多数の人へ向けて情報を発信ができるツールを持った今、受ける側もきちんとその情報を選定する能力(=リテラシー)を持たなければならない。今回飛び交った流言・デマの中には「誰かを助けたい」という善意の情報も多くあったことは確かです。しかし、善悪問わず不確定な情報による感染を最小限に抑えるということは、信頼できる情報だけを入手しやすくなることへ繋がるのではないでしょうか。
  
本著では、今回広まった流言やデマの事例を挙げ、どういった過程で広まっていったのか、そしてどのように打ち消されたのかを淡々と解説しています。流言とデマの基本的な流れとパターンを知っておくことで、同じような事態に陥った際に既視感を抱くことができ、個々が抵抗力を持つことができる、というのが著者の見解。犯人を見つける「悪者探し」するのではなく、流言とデマへの「対処法探し」を追求した一冊です。
  
情報不足よりも情報過多に悩まされた今回の大災害。「放射能にはビールが効く」というデマを鵜呑みにし、ここぞとばかりに毎夜誰かを巻き込んで飲み呆けた私が言うのも何ですが…。感染していくコミュニケーションと、そのツールの使い方について、今だからこそ考えるべき議題がここにあるのではないでしょうか。

目次。「3時間後に最大の揺れが来る」、「外国人による犯罪が増えている」、「石巻の友人が助けを求めている」など具体的な流言・デマを解説しています

悪意のあるデマだけでなく、救援を誇張するデマや、政治的意図がありそうなデマも多々ありました

「流言・デマは人を殺す」と過激な見出しですが、ある種のデマは直接的に暴力を発生させてしまうこともあるのです

「どこどこへ救援物資を!」など、善意から始まった偽の情報もありました。こういった情報に踊らされ、迅速な救済や救助が遅れてしまう場合もあります