最も身近でかつバラエティ豊富な人生劇場に足を踏み込む。傍聴マニアへの道

小説・エッセイ

2011/7/22

裁判長! ここは懲役4年でどうすか

ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android 発売元 : 文藝春秋
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:eBookJapan
著者名:北尾トロ 価格:473円

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「傍聴マニア」なる人種がいることは世間一般にわりとよく知られたことではないでしょうか。

知人の裁判がきっかけになって裁判所に興味を持った著者は、裁判所が人間ドラマの縮図であることに気づき、東京地方裁判所に通うようになります。その傍聴記がこの1冊。

確かに、裁判所は何か事件や事故にでもあわなければ多くの人が一生関係ない場所。でも少数の人にとっては職場であり、人生の一時期に通い詰める場所であり、一部の人たちにとっては自分の人生を決定される場所でもあります。ある意味、結婚式場や葬儀所よりも、バラエティのある人生と人種が集まっているわけです。ここでドラマが繰り広げられないわけがありません。

はじめはびくびくと、時に不謹慎な態度をとりつつも、一日に数十から数百ある裁判の中からこれぞと思うものをかぎつけたり、判決を先読みできるようになったりする著者の「マニアとしての成長度合い」もなかなか楽しめます。

読み始めた数ページは、人のリアルな人生を傍聴しながら、怒ったり、笑ったりするのは不謹慎な行為では、と正直、著者に対する共感はありませんでした。ですが、読み進めてゆくうちに、「あっち側と傍聴側」が紙一重であることがひしひしと伝わってきます。

不意の交通事故で過失致死に問われているおっちゃんと自分との違い。こつこつとまじめに積み上げた人生が、ほんの小さなきっかけで崩れてしまった被告と自分との違い。一瞬の間違いや複雑な要素がたまたま偶然に一箇所に一致したゆえに起こってしまった事件…。被告や原告に感情移入せずにはいられない状況が伝わってきます。まさに、裁判所は人生の縮図。その上、検察側VS弁護士の確執、裁判長の人選や人事などのドラマも絡んでくる。

「傍聴マニア」なる人たちは、女優や歌手にファンがいるのと同じように、ひいきの裁判官、ファンの検事をそれぞれ持っているとか。まさにワンダーワールド!! 筆がのってくる後半からがことに面白いです。被告のファッション考察に関しては秀逸。TPOに合った服装を求められるという点で、裁判所はオスカー授賞式より厳しいところかも?

最後に収録されている「傍聴マニア」の座談会も目からウロコの内容です。軽い夏の読書に、おすすめ。

裁判の傍聴は誰でもできる「権利」。ギャラリーが入れば検事や弁護士、裁判長の力み具合も違うというもの

交通事故はまさに誰でも加害者・被害者になりうる最も身近な事件。教習所のビデオを法廷シーンを、という著者の意見には納得です

オウム裁判という、「裁判の花形」にも傍聴参加することになった著者

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