人生の一時を、特色ある部屋で過ごす楽しみ  『東京R不動産』の魅力

更新日:2015/2/3

東京R不動産2

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著者名:東京R不動産 (著), 菅付 雅信 (編集) 価格:※ストアでご確認ください

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 東京R不動産はれっきとした不動産屋です。その紹介する物件の様子から、リクルートかなにかが仕掛ける流行のにおいを感じてしまったのですが、そういう情報社会の商社マンみたいなのが跋扈するのとは違っていました。

 本書で紹介している物件も、サイトで公開している物件も、いずれもかなりとがっていますし、まあ「オサレ」な提案ばかりです。しかしそれらの物件は、もともとは倉庫だったり、ほとんど廃屋だったりしたものを足で探し、新しい価値を見いだして提供しているということが、本書からわかります。物件を探して、情報を整理して、大家とお客を引き合わせ手数料をいただく。まっとうな不動産屋です。それも、本にできるくらい特色がある不動産屋なのです。

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 最近では大手不動産会社でも、たまにデザイナーズマンションやらリノベーション物件を紹介します。ただ、その物件が修繕される前がどういう状態だったのかを知っている担当者は少ないと思います。あくまでちょっと変わった部屋を会社のルールで紹介しているだけのはずです。

 賃貸契約するときには、よく聞かれるように敷金、礼金が必要。多くの場合、礼金は大家と不動産屋が山分け(単身者向けなど礼金なしという物件の場合は、大家が不動産屋に礼金分を支払っているだけ)します。そして敷金は大家がキープして退去時の原状復帰の修繕費や清掃費に充てられます。

 東京R不動産はこの原状復帰というところにも斬り込んでいました。本書でも最後の方で語られていますが、オーナー(大家)との合意の上でかっこよく改装し、その状態を「新しい現状」として上書きしていくという発想です。本書前半、「ライフスタイル賃貸」の項で紹介されている物件がまさにそうで、古いビルが入居者の手によって魅力ある部屋へと変貌し、さらにこの「新しい現状」という考えで次の入居者にも引き継がれてさらに進化する。ついには改装された部屋自体が次の入居者をその魅力で集めだす。

 冒頭の言葉通り、「不動産を発見する新しい価値基準をつくる」ということですね。秘密基地のロマンや、DIYの楽しさ、そういう想像が広がる1冊です。

 


ウェブサイトの検索条件からして、大手不動産サイトとは一線を画する

都心の物件とはいえ、昭和の小学校のようなこの物件…

ところが中はこんな素敵な部屋になっている

最近はマンションどころか戸建てでもみなくなりつつある和室の特集もある