いつかだれもが通る道。大文字の「愛」を感じさせてくれる作品

小説・エッセイ

2011/5/16

そうか、もう君はいないのか (新潮文庫)

ハード : 発売元 : 新潮社
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:Amazon.co.jp/楽天ブックス
著者名:城山三郎 価格:432円

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2007年に亡くなった筆者城山三郎は、「経済小説」というジャンルを確立させた人。

「官僚たちの夏」や「粗にして野だが卑ではない」など、彼の作品タイトルに聞き覚えのある方も多いのでは。

この作品も、ベストセラー、ドラマ化されたという内容もさることながら、タイトルが秀逸ですね…。誰もが口にするようなフレーズながら、インパクトを残すタイトルというのは、売れる本の大前提では。

正直に申しまして、スペイン語圏の夫婦物語や恋愛ものを(フィクションもノンフィクションも)を読みなれている私としては、おふたりの出会いも、夫婦としての年月も、劇的なものでもなく、パッションに燃え上がるようなタイプの結婚生活でもなく、「淡々」そのもの。それが「あうん」の呼吸で、お互いがお互いにとって空気のようになくてはならない存在になり、いつかは二人でいられる日が終わる…その季節の移り変わりと独特の時間空間が「あぁ! 日本!!」と懐かしくなってしまいました…。

控えめな筆致の中も、城山氏がいかに、妻容子さんが整える日常生活に快適を感じ、妻=生活=人生になっていったのかがわかります。得てして、現代は自由恋愛の自由結婚ゆえに「恋愛」の延長に夫婦があり、「個と個の集まり」を出ないきらいがあるようですが、昭和時代のご夫婦というのは、結婚した途端から「チームワーク」が本当によくできている! 役割分担がはっきりしている(=男女の平等もなかったのかも)、ある意味、今より大人が「成熟」していた時代なのかなという印象も受けました。

最後は次女井上紀子さんの手記「父が遺してくれたもの」。一代の家族の歴史がこの手記で温かにまとめられ、読後感もしんみり。ほっこり。家族って素晴らしい、という気持ちになります。

妻容子さんは旅好き。その理由は「家事をしなくていいんですもの」。単純明快です

戦争を経験した人が必ず陥いるという「生き残った」ことに対する罪悪感。作家の率直な人生観を垣間見る一ページ

がんと告知された日に、容子さんはがんを歌にして口ずさみ…

夫と妻は娘からみれば父と母。一冊でコンプリートに「家族」を包括して考えさせてくれます (C)城山三郎/新潮社