2010年09月号 『進撃の巨人』諫山創

今月のプラチナ本

更新日:2013/9/5

進撃の巨人(1) (少年マガジンKC)

ハード : 発売元 : 講談社
ジャンル:コミック 購入元:Amazon.co.jp/楽天ブックス
著者名:諫山創 価格:463円

※最新の価格はストアでご確認ください。

今月のプラチナ本

あまたある新刊の中から、ダ・ヴィンチ編集部が厳選に厳選を重ねた一冊をご紹介!
誰が読んでも心にひびくであろう、高クオリティ作を見つけていくこのコーナー。
さあ、ONLY ONEの“輝き”を放つ、今月のプラチナ本は?

『進撃の巨人』(1〜2巻)

諫山 創

●あらすじ●

巨人がすべてを支配する世界。巨人の餌と化した人類は、巨大な壁を築き、壁外への自由と引き換えに侵略を防いでいた。だが、名ばかりの平和は、知性を兼ね備えた50mを超す「超大型巨人」の出現により、脆くも崩れ去る。かつてない絶望を前に、手足をもがれ、餌と成り果てようとも立ち上がる人間たち。生き残りを賭けた人類最後の戦いの幕が開ける。注目の新進マンガ家・諫山 創が描く、話題沸騰の超大作アクションマンガ。

いさやま・はじめ●1986年8月29日、大分県生まれ。2008年、読み切り『orz』でデビュー。2009年9月、『別冊少年マガジン』で『進撃の巨人』を連載開始。

『進撃の巨人』
講談社少年マガジンコミックス 各440円
写真=首藤幹夫
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編集部寸評

絶望感の中で生き延びるために戦う

どうして人類が絶滅に瀕する状況になったのかわからない。謎の巨人たちの起源も存在理由もわからない。わからないことだらけの圧倒的な絶望感に満ちた世界で、ただ生き延びるために戦いつづける。それが本書の設定であり、同時に魅力だ。そして昨今のヒットマンガの共通点でもある。『ぼくらの』、『GANTZ』、『アイアムアヒーロー』しかり。正義のためとか、世界平和のためといった、ひと昔前の大義名分的な動機が説得力を欠く現在、物語の主人公たちも戦う理由を見失いがちだ。あるとしたら、私怨、敵討ち、もしくはゲームとしての戦いくらいか。しかし追い詰められてサバイブのために否応なく戦うというのは理解できる。誰も全人類のために世界は救わないけど、自分と近親者たちが生き延びるためなら戦うことを厭わない。それが本作や前述のヒットマンガたちに通底するリアリティだ。リアリティがあるものは怖い。怖くて怖くて最高に面白いのだ。

横里 隆 本誌編集長。ツイッターを始めたが、僕って無口な男だったんだなぁと発見。アイコンの女装写真だけが話題に……。いいのだろうか?

荒削りな絵と相性のいい大胆な設定

謎だらけのマンガである。その筆頭は巨人の正体。なぜ、彼らは捕食目的でもないのに、殺戮に熱心なのか。彼らが人間を喰らうさまは、かまきりが生きた虫をバリバリと食いちぎっていくさまを想像させる。中には、人間に近い表情をしている者もいるのに、あの凶暴性、不恰好な身体、異様にでかい口、とにかく気持ちが悪い。著者の荒削りなタッチがより巨人の不気味さを倍増させている。このマンガが多くの人の心を惹きつけるのは、大胆な設定と予測不可能な展開にあると思う。第1巻を読み終えたときには頭が「?」だらけ。戦う少年少女は出てくるが、これまでのセカイ系とはかなり違った読後感で、その迫力に圧倒された。2巻で登場人物の過去が徐々に明かされ、著者の描きたいことがだんだん見えてくるが、まだまだ予断は許さない。救いは、絶望の中にあってもあきらめないミカサの凛とした強さ。私の中では堀北真希ちゃんのイメージです。

稲子美砂 電子書籍特集では「激動の出版界」を体感できる取材に恵まれ、いろいろ刺激を受けました。ダ・ヴィンチも電子化したくなってきた!

早く続きが読みたくてたまらない!

1巻の冒頭から、SF的世界の中で何が起こったのかよく分からないまま猛烈なスピードでラストまで一気読み。ラストのまさかの展開に絶叫! すでにこの世界に飲み込まれるものの、どうして人類がこんなすさまじいサバイバル状況に陥っているのか、全く明かされないまま物語がどんどん悲惨な方向へつっぱしっていく。そもそも人類を守ろうとする戦士たちがどうして若者たちばかりなのだ? 巨人はなぜ生きた人間をばりばり喰らうのか? なぜ失った身体をすぐに再生できるのか? もしかしてものすごく高等な生き物? のように謎は深まるばかり。2巻のラストで未来が少しだけ開けたような気がするが、希望的観測かもしれない。私は脱出モノ、サバイバルモノが大好きなのだけど、本作の設定は斬新だ。敵は巨大な足の速いゾンビ(?)だし。続きが読みたくてたまらない漫画の登場に心が躍っている。ハリウッドで映画化の日もそんなに遠くない?

岸本亜紀 諸事情で自宅安静中。パソコンとメールを駆使して仕事してますが、外出禁止令が……。秋には大注目書籍刊行目白押し! お楽しみに。

歪んだ巨人たちの、きれいなところ

本作の設定の妙、そしてテーマ性の深さを差し置いて、「とにかく巨人がいいよね!」と言いたい。だいだらぼっち、ウートガルザ・ロキ、サイクロプス、ウルトラマン……世界を創る力と壊す力を持ち、しかしいずこかへと姿を消した巨人たち。子どものころ、異形のものどもの物語を読んで感じたワクワクが、本作の巨人たちを見て蘇った。生殖器がなく、食事の必要がないのに人を食い、ある1箇所を除いて不死身……いかにも神話的な設定もさることながら、何より見た目が素晴らしく狂っている。ある者は異様に頭が大きく、またある者は腕が異様に細い。皮膚が剥けたように筋肉が見えているかと思えば、水死体のようにむくんでいる。笑っているようにも泣いているようにも見える。ゴヤやルドンの絵を彷彿させる多種多様な歪み具合だが、1点だけ共通項があるのだ。歯並びがきれい。ただ喰らうだけの存在を、これほど端的に描いてみせた著者に脱帽である。

関口靖彦 子どものころ映画『風の谷のナウシカ』を観て、大きくなったら巨神兵になりたいと願ったことが、しみじみ思い出されます


いま最も続きが待ち遠しいマンガです

度肝を抜かれた。いきなり大巨人現れるし。かといって荒唐無稽なわけでもない。かりそめの平和に慣らされた人間が、突如訪れた圧倒的な絶望を前に呆然とし、うろたえる姿に、自分だったら? と思わずにいられない。何なんだろう、この面白さは。予想を裏切る展開に、続きが気になって仕方ない。女性読者の中には、いかにも男性向けのタイトルやパッケージから手を伸ばさない方もいると思うが、それで読まないのはもったいないのでぜひ一読してみてほしい。私もまんまとはまりましたから!

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なんだか“気になる”巨人たち

書店で初めて第1巻に出会い、手にしたときの“ちょっと気になる”感覚。この不思議な違和感は、豪快なテンションとスピードに圧倒され、夢中で読み終えたあとも続いている。平和ボケした人類を絶望の淵に叩き落した多種多様な巨人たち。その状況は現実世界のさまざまな場面に置き換えられ、身につまされる。しかし、設定もさることながら、やっぱり“気になる”のは巨人。4メートルほどの巨人に細かく捕食されるなら、いっそ15メートル級に丸呑みされたい……なんて厭な考えが頭をよぎる。

似田貝大介 9月19日の深夜に、石川県金沢市で『幽』の怪談イベントをやります。あっと驚く企画を準備中です。詳細はWEB幽でご確認ください

それでも頁をめくってしまう

読み終えたあとに、ただならぬ虚無感に襲われた。マンガなのに、この絶望感はいったいなんなんだ。ニタニタと不快な笑みで突進してくる巨人に、ぶつけようのない怒りが止まらない。そして理不尽にせまってくる死がたまらなく怖ろしい。この作品にリアリティを感じてしまった私は、やはりどんな世界でも生き延びたいのだと思う。「この世界は残酷だ… そして…とても美しい」。絶望のなかでもそう思えるミカサのように冷静に戦えるかというと、まったく自信はないが。

重信裕加 『借りぐらしのアリエッティ』を観ました。でもこっちはこっちで小さいのは大変だなぁと考えてみたり。夏バテで頭がまわりません


恐い恐い恐いっ!!

あまりに絶望の度合いが高いと、ほんの少しの希望がとてつもなく輝いてみえる。この恐ろしい世界観の中で、エレンは強い。少年らしい反発とまっすぐさを持っていて、それこそが正しいと思わせてくれる輝きがある。エレンの父親が握る秘密が、エレンを変えてしまわないといい。それにしても巨人の捕食風景がグロテスクで衝撃的。人型だけによりインパクトがある。感受性豊かだっただろう中学生時代に出会わなくてよかった。迫りくる絶望感を受け止めきれなかったと思う。恐すぎる。

鎌野静華 ダ・ヴィンチ編集部も遅ればせながらツイッターをはじめました。@davinci_editorです。取材の様子などもつぶやいています



この先の展開がとにかく楽しみ!!

正直、なんで惹かれるのか?とも思う。でも、確実におもしろい。設定は「人を喰う巨人に立ち向かう」とごくシンプル。残酷で絶望的な状況で煌めく少年少女の想いが、世界に入り込む速度を加速する。そして第1話「二千年後の君へ」(このタイトルからして!)の各所や、エレンの記憶など、ベタかもしれないけど回収されうる伏線がそこかしこに。2巻ラストと巻末予告の惹きも素晴らしい。とにかく続きが気になる! まだ新人であろう作者が現在進行形で拡げる世界に“高揚”しまくりです。

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