24年の歳月を経てもなお、みずみずしい印象は変わらない。280万部の大ベストセラー歌集

更新日:2011/9/12

サラダ記念日

ハード : iPhone/iPad 発売元 : Kawade Shobo Shinsha Ltd. Publishers
ジャンル: 購入元:AppStore
著者名: 価格:350円

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二日前から何度も書いては削って…をくり返していたこのレビューを書き上げよう、と思っていた今日(5月8日)。偶然、著者の俵万智さんがツイッター上にて、こんなツイートをしていました。「五月八日という日付に、心のどこかが反応する。誰かの誕生日だっけ?…思い出しました。初めての歌集『サラダ記念日』の誕生日でした。たしか奥付がそうなっているはず。24歳でした。今は…ちょうど倍!」
  
一冊の本が社会現象をひき起こしたとまでいわれ、現在までで280万部発行されたという『サラダ記念日』。今から24年前、1987年の5月に出版されたんですね。

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当時大学生だったわたしは、気に入った短歌の頁の角を折って印をつけ、何度も読み返しては、勝手に自分の恋愛とオーバーラップさせたりしていたなぁ--なんて思い出しながら、この電子書籍ではしおり機能を活用して「きゅん」となった作品をチェック。ところが、本書で使えるしおりは最大10件までということで、あっという間にいっぱいになってしまいました。
  
〈手紙には愛あふれたりその愛は消印の日のそのときの愛〉
  
〈青春という字を書いて横線の多いことのみなぜか気になる〉
  
〈トーストの焼きあがりよく我が部屋の空気のようよう夏になりゆく〉
  
〈さくらさくらさくら咲き初め咲き終りなにもなかったような公園〉
  
〈愛された記憶はどこか透明でいつでも一人いつだって一人〉
  
短歌って、散文に比べると、一般的にはちょっと縁遠いような気もしちゃいますが、俵さんによれば、彼女が選者をしている新聞の短歌投稿欄には、毎週何千という応募があるのだそう。それってやっぱり、口語を大胆に取り入れ、読者に「もしかしたら自分にも短歌が作れるかも」と思わせたこの『サラダ記念日』の影響が大きいのではないかと思います。
  
遡れば約1300年という長い歴史があるという短歌。それをこうして電子書籍で、電車の中でもベッドに横になりながらでも、さくさくっと読めてしまうなんて、考えてみたら不思議な気もします。でも、本書の、一頁に一首というシンプルな構成はすっきりと読みやすく、短歌という形態とiPhoneとは相性がいいんだ、というのが今回の発見でもありました。
  
一ファンとしては、次に俵さんが新作歌集を出されるときには、電子書籍の特徴を生かして、ご本人の朗読音声入りっていうのを期待したいですね。

電子書籍のおもしろさのひとつに、自分で文字のサイズやフォントを変更することができることがあります。同じ短歌でも、こちらのリュウミンLというフォントと、下のゴシック系のフォントではイメージが変わると思いませんか