貧乏で、人恋しくて、未来が見えなくて。28歳・無職・マンガ家志望の男が東京迷路を右往左往

公開日:2011/9/4

おのぼり物語

ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android 発売元 : 竹書房
ジャンル:コミック 購入元:eBookJapan
著者名:カラスヤサトシ 価格:400円

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まさかカラスヤサトシに泣かされるなんて…。
  
だってこの人、「キモカッコワルイ」が売りのギャグ漫画家ですよ? 著者名そのままの4コマ『カラスヤサトシ』では小学生並みのアホな言動全開ですよ? 趣味はガシャポン人形遊びと南京玉すだれな男ですよ!?
  
それでも、それなのに。このカラスヤ版「上京物語」は胸にグッと迫るものがあるんです。

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「漫画一本で生きいこう!」
  
29歳を目前に一念発起した著者は、バイトを辞めて勢いで大阪から上京。友達も恋人もいない東京で、載るあてもない漫画をちんたら描き続ける貧乏暮らし。神田川をぼさーっと眺め、神保町で古書店街の規模に圧倒され、人恋しさでひとり奇行を繰り返す日々…。
  
なーんて書くとセンチメンタルな気分になってしまいますが、そこは根っからのギャグ漫画家。貧乏も孤独も不運もすべてネタに変えて、しっかり笑かしてくれます。
  
が、後半はトーンが一転。大きな不幸が筆者を襲い、息子の将来を心配する母はこう呟きます。
  
「30になって40になって…今のままでそんでもあんた…誰とも会わんと部屋でまんが描いてんのか? そんなん人生て言えるんか?」
  
グルグルと人生迷いっぱなしの著者に、この一言はずしんと響きます。アホらしく、切なく、ときどき辛気臭く、それでもおかしな東京ひとり暮らし物語。「上京した最初の夜の静けさを覚えている」という人は必読です。

無職・漫画家志望の28歳に世間の風は冷たかった…

地方出身者の「上京あるある」。関東のローカルニュースって新鮮でしたよね?

上京5日目にして西東京市に落ち着いた主人公。「この町全てを私は好きになる」という決意になんだか共感してしまいます (C)カラスヤサトシ/竹書房