自己実現に向かうか、外的条件を求め続けるか

小説・エッセイ

2011/5/16

こころの格差社会――ぬけがけと嫉妬の現代日本人

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : KADOKAWA
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:電子文庫パブリ
著者名:海原純子 価格:734円

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「格差」とか「勝ち組」、「負け組」といった言葉が定着して久しいが、アメリカは日本以上の格差社会。しかも、ニューヨークには大富豪もかなりたくさん住んでいる。その中で個々の日本人は経済的には大したことないが、平均的に教育水準が高いことと、茶の湯や歌舞伎からトヨタ、果てはアニメまで、ゆたかで幅広い“文化的な上げ底“のおかげで、アメリカ人の「勝ち組」の人たちとつきあう機会も少なくない。

私は日本語を教えているので、年齢的には下はアニメマニアのティーンエイジャーから、上は枕草子を読みたいというリタイアした知日派教養人まで、また、経済的にらくではないだろうと思われる母子家庭の子供から、マンハッタンの高級コンドミニアムに住み、週末は郊外のセカンドハウスで過ごす現役弁護士やアクターまで、実にさまざまな人たちの生活をかいま見る機会がある。

私自身は経済的には下の方に属しているが、日本語を教えるためにあちこち出歩くと、自分がまるでミルフィーユの層の中を、経済的な最下層と最上層をのぞく中間あたりの層を上へ下へと泳ぎ回っているように思えてくる。ただ、とても大事だと思うのは、私の生徒たちは経済的にどのあたりの層に属していようと、「幸福度」や「満足度」のような尺度があるとすれば、その程度にほとんど差がないように見えること。

この時代、日本語を勉強したいという人は、私の生徒に限ってみれば、本当に日本語を勉強したくてするのであって、仕事のためにしぶしぶ、という人はいない。だから、好きなことを勉強できるという満足度においては、母子家庭の子供だろうと、裕福な弁護士だろうと差はないのだろう。そういう意味で、「格差」というのは一見経済的な格差のようで、実はこの本のタイトルにもあるように、問題は「こころの格差」にこそあるのだと思う。

格差時代に何を生きる軸にしたらいいか、問い直してみようと言うのがこの本の趣旨だと思うが、東日本大震災という大きな被害があったあとでは、問い直すというより、生き方を根底から考え直すことが必要になったような気がする。その必要性を感じている読者の方々には、この本はそのためのひとつの方向性を与えてくれると思う。

目次にざっと目を通して、興味のあるところから読み始めてもOK

右のような欲求モデルから左のように、自分の無意識レベルの欲求に気づき、それを意識レベルで人生に加えると自己実現的人生モデルになる