Wikipediaの作品リストにも載ってない、池上遼一のレアでカオスな異色青春劇画

更新日:2011/9/12

青春地獄

ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android 発売元 :
ジャンル:コミック 購入元:eBookJapan
著者名:池上遼一 価格:324円

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展開が、まったく読めない…!
  
池上遼一といえば「現代の絵師」「劇画界の第一人者」と呼ばれ、今も第一線で活躍中の超ベテラン漫画家。『サンクチュアリ』『男組』『HEAT -灼熱-』をはじめ多数のバイオレンスアクションをヒットさせてきた大御所ですが、この初期短編集『青春地獄』は妙なパワーが溢れているというか度を越しているというか、とにかくカオス! なんです。

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例えば、表題作の「青春地獄」。
  
高校では番長(!)として君臨するも、家庭では父との確執に悩む英男。優秀だった亡き兄へのコンプレックスから、父と息子の溝は深まる一方だったが…。
  
という60年代日本版『エデンの東』ですが、登場人物たちの行動がどれも突飛すぎる! 転校生との過激な番長対決しかり、父と息子の確執の原因しかり、「え、あんなことのせいでそんなことしちゃうの!?」といちいち突っ込まずにはいられません。メーターの振り切れたラストにたどり着く頃には、読者は完全に置いていかれてることでしょう(笑)。
  
この他、ホラーなのかコメディなのか判然としないマッド・サイエンティストもの(?)や、夢敗れたはぐれ者の皮肉な出会いを描いた青春悲話、鄙びた山村の宿で起こる恐怖譚、殺人犯と人質少年の逃走劇など、ホラーからアクションまで5編を収録。
  
1968~69年発表の作品とあって、古本屋でもめったにお目にかかれない激レア物件。平成の漫画にはないパワフルなカオスを味わいたいという玄人漫画読みにお勧めします。

表題作「青春地獄」のクライマックスの一コマ。「番長」が存在していた日常が新鮮

この奇怪なタイトルから内容を想像できた人は尊敬します

毛はえ薬の開発に励む兄とのんきな弟。この後、驚愕の展開が!

読み切り短編集なので、目次ページからダイレクトに読みたい話に飛ぶことも可能

師匠である水木しげるのタッチと、交友のあったつげ義春の世界観が色濃く出た「白い液体」 (C)池上遼一