一般女子に断然オススメ! SM小説の大家・団鬼六の超ドラマティックな自伝的小説集

小説・エッセイ

2011/6/3

外道の女

ハード : PC/iPhone/iPad/Android 発売元 : 講談社
ジャンル: 購入元:eBookJapan
著者名:団鬼六 価格:432円

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今回、団鬼六特集やるからレビュー書かない?

と声をかけてもらったんですけど、未だちょっと腑に落ちずにいます。

だって、鬼六先生といえばSM! けれど私は日本のSM小説を読んだことがない。SMクラブにも1度しか行った事ないし、縄鞭蝋経験だってキッザニア以下のままごとレベル。その後、S女さんに「私の6番目の奴隷にならない?」と連絡頂いたけど辞退しちゃったし。そんな私に一体なぜ…? と、わからないながらにこの作品タイトルが気になって試しに読んでみたわけです。そして今、天国にむかって叫びたい。鬼六先生、最高です!!!

この『外道の女』は、“私”の視点から語られる6本の短編小説が収録された作品集で、鬼六先生と親交の深かった実在の人物が(恐らく、その界隈の方々にとってはスゴいひとなんだろなと思われる人も多々)登場するなど、かなり自伝的な内容となっています。

しかしハードかソフトか、でいうと実はソフト。「SM愛好者の精神科医たちの前で、排泄行為をさらす美人女将」とか確かに出てくるけど、でもソフト。だって私、一回もヒかなかったもん(笑)。

まあ言うてもポルノ小説ですから、ミート・スティック(※漢字に脳内変換してお読みください)的な独特の言い回しは出てきますが、なんかドロドロネロネロした嫌悪感もよおさずにはいられないような描写や「ちょ! 痛たたたた」っていうのは一切なし。それどころか、最初に収録されてる「神楽坂物語」などは、谷崎潤一郎の『痴人の愛』のヒロイン・ナオミを彷彿とさせる悪女・菊香との同棲を描いた話なんだけど、元芸者の菊香が三味線をひいているのを強引にひきよせ唇をあわせるくだりとか「もうもう、なんてお耽美なの!」と、ウットリめろめろ。表題作「外道の女」に登場する極道の女・織江も思わず憧れてしまうほどに魅力的で、その生き様は実にドラマティック。いずれもそんじょそこらの恋愛小説よりよっぽどグッとくるしおもしろい!

自伝的とか回顧録的ってきくと、ちょっとゆるそうな気がする人もいるかもですが、この作品集においては全然あてはまりません。ちょっとややこしい言い方になっちゃうけど、「事実は小説より奇なり」なできごとが小説内でばんばん起こって、退屈しないどころか目を逸らせない。まあ、そもそも鬼六先生の人生そのものがきっと超ド級のエンターテインメントだったわけですから、その自伝的小説がつまらないわけがないのですよね。

嗚呼、生きてらっしゃる間にぜひお目にかかってみたかった!

ドギツい感じかと思いきや、平易でありながら豊かで美しく、ときおりウィットに富んだ女性にもやさしい文章。“男をモリモリ悦ばせる”って表現がかわいくって好きです(笑)

映像化希望! のお耽美シーン(「神楽坂物語」)

『痴人の愛』のヒロイン・ナオミにひけをとらない魅力的な悪女・菊花(「神楽坂物語」)

「ヒッチコック劇場」「バークレー牧場」といったテレビ洋画の台詞の翻訳仕事の苦労話なども、実際の経験を元に詳しく描かれていて非常に興味深かったです(「楽園」)

「SM劇団・紅座」に登場する美濃村氏も、実在の人物。美濃部晃以外に、喜多玲子など多くのペンネームを持つ(本名は須磨利之)。この方のエピソードがまたスゴい! (C)団鬼六/講談社