絶望、凌辱、地獄、そして甘美…。恍惚の境地を発見しました

小説・エッセイ

更新日:2012/3/5

肉の輪舞

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : 河出書房新社
ジャンル: 購入元:電子文庫パブリ
著者名:団鬼六 価格:648円

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団鬼六先生は官能小説界、とりわけSM小説界の巨匠、加えて杉本彩姉さん主演の「花と蛇」原作者…、だということをふんわりと知っていたくらい。正直に申し上げると、作品は未読でした。

この度の訃報に接し、追悼の意を込めてそろそろ私も団作品ヴァージンを突破しようではないか! というわけで、チョイスしたのは「肉の輪舞(ロンド)」です。タイトルからすでに、淫靡な蜜が滴り、官能の火花が飛び散っております。

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本著は、凌辱の先にある甘美な世界を知った女性たちを描いた短編集。不倫の果てにあっさり捨てられた挙句、二人の悪党に監禁されて情婦となるOLの江梨子(肉の輪舞)。嗜虐的変質者を集め、自らを辱める乱交の儀式を主宰する呉服屋の未亡人・浪江(異常の季節)。拉致され、屈辱を受けているうちに快感を覚え始めた女優の小夜子(あの女優を犯せ)。強盗に脅されて丸裸になり、絡み合いを強要される人質の耕平と銀行員の美代子(真昼の狂態)。

ようするに、弄られながらも気がついたらいい気持になってきちゃった人たちのお話です。嫌よ嫌よも好きのうちってことなんですか、団先生。

学生時代にレディコミの回し読みはしていたものの、正統派官能小説に触れずこれまで生きてきた私。どれだけ痛々しく、どれだけエロいものか、と鼻息荒く読み始めたのですが、衝撃と裏切りの連続でした! 激しく熱く獣のように絡み合うのではなく、ねっとりと温く凌辱を与えていく描写には、ほんのり気品さえ漂うほど。己の中で燻っていたマゾ心がツンツンと突かれ、膨んでいってしまうではありませんか! 団先生、これ以上は止めてーっ!

あと、もう一つだけ。金八先生が「人っていう字は、人と人の支え合うカタチなんです」って言っていたのを覚えている方! それは間違いですよ。団先生曰く、人という文字は「両手を固く後手に縛り上げられ、ベッドの上で開脚」している状態とのことです。

これまで感じたことのない読後感にうっとりしながら、気が付くとアイフォンを持つ手がじんわり。いや、私は(今のところ)実践派ではなく空想家です! 我こそはノーマルだ、と自称する女性に読んで頂きたい一作でした。

愛人に振られた夜、帰り道で拉致監禁される江梨子。捨て鉢な気持はやがて、地獄へ落ちたい…という変質的な快感に生まれ変わる

啼泣(ていきゅう)、肉襞(にくひだ)…など、難しい漢字はルビをふって読んでも。小気味の良い言葉の響き・リズムにも痺れます