そうそう、犬好きって、犬が動物だって忘れがち…。獣医さんの薀蓄いっぱいの一冊

小説・エッセイ

更新日:2012/3/2

「犬は三日飼えば三年恩を忘れない」は本当か?

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : PHP研究所
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:電子文庫パブリ
著者名:小方宗次 価格:500円

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自他ともに認めるイヌ好きですが、実はイヌに関する本は意外にもあまり読んだことがありません。もっぱら写真集や漫画でうふうふするばかり。

日常「イヌの気持ちは目を見ればわかる」「イヌは私のことをイヌ好きと知っている」と豪語しているわりには、きちんとしたイヌの知識やイヌ文化には疎い…ので、この一冊を購入。いろんなアングルからイヌに迫ったこの一冊、なかなか勉強になりました。

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いわく、日本のイヌ社会は、人間社会と同様なことが起こっている、と。日本のイヌは「一人っ子」で、本能に沿ったイヌ社会の基本とは遠く離れたところに暮らしているのだそうです。そういわれれば、そう…。

食べ物を探す苦労もいらずに飽食し、ほぼどこでも「安全地帯」で自分のテリトリーを守る本能も劣る。結果、イヌ社会の基本マナーを知らないイヌが増加するばかり。イライラするイヌや、散歩の際のイヌ間の暗黙の了解すら知らないイヌも。

驚いたのは、イヌの生殖本能までも、「商業」ベースに乗ってしまった現在、イヌの母性や父性本能さえも狂ってきているのだそうです。父性本能が狂った結果、子犬におっぱいをやろうとして乳腺炎で死んでしまうオスイヌもいるのだそうで!! ハムスターやウサギに「子殺し」がよく見られるという言及にも目がうろこです。人間のペットとして飼われているこうした動物が出産する→かわいいかわいいと赤ちゃんを触ろうとする「外敵(=飼い主)」→自分の子供を守ろうとする本能が働く→でもオリの中で暮らしているので、子供を隠す場所がない→結果食べてしまう…。涙が出ます。

日ごろイヌを「家族の一人」として人間のように扱っている私たち、獣医さんでもある作家の「イヌは動物である」というスタンスをすっかり忘れて、かわいい彼らを逆に苦しめていることも多いのだと、しみじみ反省しました。

本の構成は、かなりオリジナル。「イヌにかかわる諺」を紹介・解説した後、それに派生したイヌの生態の話やエピソードが続きます。最後には「犬&DOG言葉小辞典」として、国内のみならず、中国や英語圏で使われる犬を用いた言い回しを集めていてマニアック。

犬は古代から人間の友達。大昔もやっぱり「犬好き」っていたのかしら…

そうなんです。問題はここ。仲良し仲良しで、彼らが動物であることを忘れていませんか?