練られた伏線と魅力的なキャラクター! ラノベとあなどるなかれ、青春小説の傑作!

ライトノベル

更新日:2012/4/18

涼宮ハルヒの憂鬱

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : KADOKAWA
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:電子文庫パブリ
著者名:谷川流 価格:540円

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なんかもうね。9巻も一気読みすると言いたいことがありすぎて、文字数足りません。むり。だって思っていたよりすげえ面白かったんだもん! 偏見もっててごめんなさい!

みくるちゃん可愛すぎでしょとか、真の主役は長門さんじゃね!? とか、いろいろありますが、ハルヒがふつうに、一番読者に近い女の子だったという事実にびっくりです。あそっか、だからこんなに支持されてんのか! と妙に納得。もっとびっくりしたのは、基本的に全編とおして「涼宮ハルヒは蚊帳の外」ってことだったけどね!

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たとえば小説を読んで「こんな青春送りたかった!」と思ったことはありませんか? 世界にはたくさんの面白いことが存在していて、実はクラスメートが超能力者とか、孤島に行けば事件が起きるとか、全力で青春するなかに、お話で読んだり見たようなわくわくするようなことがつまっている気がしていたのに、起きる事件といえば片思いとか友達との喧嘩とか、受験がどうだとかそんな誰もが経験するようなことしかなくて、ふと気づけば「わーなんかめっちゃ普通、ていうか地味」な世界に自分はいて、世の中こんなもんかあ、そうだよなあ、そうそう事件なんて起きないよなあなんて思う。そんな気持ち。

涼宮ハルヒというのは、ごくあたりまえのそんな感情を持って、自分はごく平凡でちっぽけなんだ、ってわかっているけど、でもそんなのいやだ、そんなのつまんない、抜け出したい! と思っている女の子なのです。ただしその思いが強すぎて、思い通りに世界を改変するほどに至っているというのが大問題なのですが。

だけど彼女は、その事態を知らない。いつも語り手のキョンが巻き込まれ、知らないうちに周囲の人間が解決しているので。でもこれって、「自分の知らないところで世界は案外おもしろく動いてるよ」ってメタファーなのかなって真面目なことを考えてみたり。それぞれの巻のあちこちに伏線が貼ってあって引っ張られてしまう、その構成力もすばらしいのですが、キョンというやりすぎなほど常識的な語り手が常に冷静に突っ込みをいれ、脱力してくれているおかげで、私たちも素直にその世界に入り込めます。「あったらいいなあ」と「そんなことあるわけないじゃん」の境目のフィクションと言う世界を、存分に楽しむことができます。

ほんとは、いかにみくるちゃんが可愛いかとか、長門さんめがねかけてくれよ! とか、長門さん軸でお話読み直したいよ! とか、巻飛び越えてそんな伏線ってありかよ! とかいろいろ感想とか書きたかったんですが、やはりむずかしいですね。文字数足りなさすぎですわ。

というわけで、「もっと日常がおもしろくなればいいのに」と一度でも思ったことのある方は、ぜひぜひこの作品を読んでみてください。読む前にもうちょっと具体的に知りたいと思った方は、「ダ・ヴィンチ」の特集で予習するのもいいかもしれません。

語り手のキョンもこんなふうに「突然、おとぎ話みたいなことがおこったらいいのに」と思っていた、「でもそんなことはない」と知ってるふつうの男の子。そして涼宮ハルヒと出会うのです