道尾秀介・直木賞受賞後初の作品は「優しさ」の満ち溢れる清涼ミステリー

小説・エッセイ

2011/9/4

カササギたちの四季(春・夏編)

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : 光文社
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:電子文庫パブリ
著者名:道尾秀介 価格:525円

※最新の価格はストアでご確認ください。

「月と蟹 」で第144回直木賞を受賞した道尾秀介。受賞後初の単行本・最新作がこの「カササギたちの四季」。

本来なら当分の間は通常の新刊扱いで十分ベストセラーが見込める作品なのだけど、かなり早いタイミングで電子書籍化。まずは出版元・光文社の英断に感謝。

舞台は赤字経営の「リサイクルショップ・カササギ」。

近くで事件が起こればクビを突っ込まずにいられない推理好きのダメ店長・華沙々木。仕入担当なのにいつもガラクタを高値で買い取らされてしまうトホホな副店長・日暮。そんな2人に救われ、以来何かと店に入り浸る女子中学生・菜美の3名を中心に繰り広げられる、「日常ミステリー」といった趣。

勘違いこそ激しいがどこか憎めない華沙々木、語り部でもある日暮の洞察力、カワイイのに何故かミステリアスな菜美、と、キャラクター設定も絶妙。タイトル通り、季節に併せた四編のエピソードで構成されている。

道尾作品にもかかわらず、超常現象もオカルトテイストも無い。直木賞受賞作の「月と蟹」で感じた純文っぽさも皆無。代わりに文中に溢れているいるのは、限りなく心地良い「優しさ」と、フワッとした「浮遊感」である。

意外に思う人も居るかもしれないが、よく考えてみればもともとこの人にはこういう引き出しがあった。かなり不気味なホラー系の作品でも、マニアックな殺人モノでも、どこかで必ずホッと出来る場面が存在し、そこに限りない優しさを感じられたはず。

取り扱いの難しい「優しさ」という感情素材を敢えて中心に据え、全開にしたのがこの四編。これまでとタイプこそ違うものの、これも紛れもなく道尾秀介ワールド。しかもかなり心に残る作品。

電子書籍版は単行本の1冊を「春・夏編」「秋・冬編」の2冊に分けて販売されている。1冊あたり525円だから、2冊購入しても1,050円。実は単行本を購入するよりも安価であったりする。

なので、初めて道尾秀介を読む、という人には鋭くオススメ。

新作の前半が525円で買えるのだから、ぜひお試し的に「春・夏編」を読んで欲しい。読めばきっと「秋・冬編」を読まずにいられなくなるから。

オススメはオーソドックスな縦組み・秀英横太明朝体・文字サイズ小。背景をクリーム色にするとかなり感じよく読めます

ゴシック体・文字サイズ大にした画面。視力に自信の無い人もまず読めそう

この作品に関しては、横組み・横表示も違和感無し。このモードのページめくりは縦にスワイプします