あなたが扱ったことのある大金はいくらですか?
更新日:2011/11/24
マネーウォーズ (1)
ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android | 発売元 : ファミリーソフト |
ジャンル:コミック | 購入元:eBookJapan |
著者名:宮川総一郎 | 価格:420円 |
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ゲーム会社などを設立し、実業家でもあるマンガ家、宮川総一郎の作品。
本作は、1980年代にビジネスジャンプで連載されていた。まだバブル崩壊前である。
証券会社山興証券浦和支店に勤める入社一年目の証券マン、相場剛が主人公。先輩証券マンの江本春彦、同僚の証券レディ山崎瞳、営業次長の大門元、部下の高野水華たちや顧客に囲まれ、経験を積み、証券マンとして成長していく物語である。他にも相場師「北浜の寅二郎」や「ヤクルトのおばちゃん」と呼ばれる営業成績トップのおばさん社員などユニークなキャラクターも登場してくる。
証券マンは、顧客から受けた注文株を売買することしかできない。だが、顧客のお金を運用するのである。それを正確に、誠意を持って。証券マン相場剛は、そのシビアな世界で誠実に働く。
証券マンの国債1000万円、投資信託500万円という1ヵ月のノルマ額や、各証券会社で問題を起こした客の名前が載る回状ブラックリスト、高額所得者名簿による電話営業など、当時の証券業界の描写が生々しく、私はそこにリアルさを感じた。それだけではない。株で儲かった時は自分の力、損した時は証券マンの判断のせいにする顧客。信念のある銘柄なら億単位でも買いたがる投資家。顧客の欲望は天井知らず。一方で、ノルマのために顧客の金をギャンブルのように扱い、顧客を食いつぶすことしかできない大多数の証券マン。逆に顧客と長く付き合いたいと願う主人公。証券マン側の人間も様々である。
そんなシビアな世界で生きてきた年配証券レディ「ヤクルトのおばちゃん」の台詞は印象深い。
「人間は弱い。人は欲が絡むと子どもになる。ちょっと冷静に見れば、真実だと理解できるのに、欲が絡むと自分に都合のいいことを言ってくれた人間の偽りの言葉を簡単に信じてしまう。人間は誰でも自分には甘くなるもの」
この言葉は、マネーウォーズという戦場で生きる人間の正直な姿を表していると思う。結局みんな怖いのだ。
私が就職活動をしていた時代、証券マンは花形職業であった。初任給が公務員の倍、独身寮完備である。だが100人採用して、1年後1人残れば御の字というシビアな業界であることを後日知り、蒼白となったものである。
まさしく証券マンはマネーウォーズという戦場に赴く兵士の如くなのである。
主人公の相場剛。ビジネスジャンプらしいキャラ顔
一括注文。10万株買い。証券マンの腕の見せどころ
兜町証券取引所。ここも戦場のひとつでしかない
相場剛のミニ株講座。話数ごとに掲載されている
ついに登場。相場師、北浜の寅二郎
島本和彦先生のキャラのように熱い相場師なのだ
一番目立たないおばちゃんが実は営業成績トップ
そのおばちゃんが証券業界の人間模様を説く (C)Souichirou Miyakawa