うずまきに支配された街におこる不気味にしておぞましい事件の連鎖

更新日:2012/1/5

うずまき (1)

ハード : PC/iPhone/iPad/Android 発売元 : 小学館
ジャンル:コミック 購入元:eBookJapan
著者名:伊藤潤二 価格:432円

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仕事柄、連日連夜のべつ本やらマンガやらを手にしているのだが、だんだん作家のイマジネーションが辿る軌跡みたいなものを、ストーリーの中に読み込めるようになってくる。
  
つまり物語の中に「なるほどこういう経緯でこの発想が出てきたんだ」と作家の脳内構造のヒントが見え隠れして先の展開が推測できたりするんだけど、伊藤潤二に関しては見事なくらいそれが出来ない。どこからこのアイデアが出てきたのか、なにを頼りにこっちへストーリーを展開させることができたのか、これからどう「オチ」るのか、予測なんて絶対不可能だ。

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うずまきという死と生のイコンを使ってホラーを描こうという思いつきは誰でも持てるかもしれないが、渦巻き模様からこれだけ多様に不気味なるものを取り出して、これだけコワサの根元にまで筆を届かせるのは尋常ではない。ストーリーが、絵が、このマンガのすべてが、「いつもの生活」を根こそぎ揺るがす「この世の不条理」を余すところなく表現して、息もつかせない。ありえないほど恐ろしいが、どこか不気味なリアリティをたたえているから、大人も、いや大人こそが楽しめるコミックだろう。
  
ある日ヒロインの女子高生・五島桐絵は隣町の高校に通う斎藤秀一の父が座り込んで壁をじっと見つめているのを見つける。彼は桐絵にも気づかず夢中でカタツムリの殻を見つめ続けていた。秀一はつぶやく。「渦…渦だ…うずまきだ…このまちはうずまきに汚染され始めている…」。
  
怖い物好きにとっては冒頭からしてたまらないが、ラストシーンは誰もがでたまげるだろう。たとえあなたがマンガ嫌いでも、是非一度は手にとってほしい名作。

絵の雰囲気がそもそもおっかない

あらゆるものがうずまきに呪われていく

気味の悪さ、おぞましさは超弩級 (C)伊藤潤二/小学館