江戸の自由な風を胸いっぱいに吸い込め
更新日:2011/10/5
[コミック雑誌版]とんでもねぇ野郎 第1話
ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android | 発売元 : 少年画報社 |
ジャンル:コミック | 購入元:eBookJapan |
著者名:杉浦日向子 | 価格:53円 |
※最新の価格はストアでご確認ください。 |
杉浦日向子は、いつも力が抜けてるとこが魅力。
おっそろしく強い侍がふだんダラッとしてるのは剣豪小説によくあるが、なんの取り柄もない町人もダラッとしてる。犬も猫ものたのたしている。そんじゃダメじゃないかって、ダメなんだよね。そのダメを優しく書くとこがいいわけ。
江戸時代っていうと遠いようで近く、分かるようでよく分からない。テレビの時代劇は面白いけど、そこで描かれているのが「ほんとう」なのか、「ほんとう」に近いことなのかさえ、実は検証できないまま僕らは鵜呑みにしている。実際は当時の人が現代の言葉を使っているわけもなく、なんていうかあれは「お江戸フィクション」、どこにもない時代のどこにもいない人達の話なんだ。
そこへいくと杉浦は時代考証を本格的に学び、せりふはもちろん、小道具のひとつひとつからかなり精確。実際一度ページをめくり出すと、なんだか空気が違うのだ。このマンガの中に吹く風は当時のもの…そう思わせる説得力がある。
びっくりするような劇的なことが起こるわけじゃないし、すごい美女も出てこない。なんかそういう仕掛けが面白いんじゃなくて、江戸のありふれた生活のリズムこそが醍醐味。噛みしめるように読んでいくと分かる。僕らはこのテンポが心地いいと感じるDNAを確かに持っている。そしてもしかしたら、この感じこそが「本来」なのかもしれない。
ダラッとして、のたっとして、なんとなく話をして、そうしているうちに日が暮れてくる。そこで見上げる空は現代とたいして変わらないはずなのに、杉浦マンガの空は泣けるほど清々しく美しい。江戸の空気を肺いっぱいに吸い込め。
時代考証も細かく正確だ
杉浦の描く空は広く、とても印象的 (C)杉浦日向子/少年画報社
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