戦後の混乱期、だれがどうやって「海軍復興」を目指したのか…

公開日:2011/9/4

海上自衛隊はこうして生まれた 「Y文書」が明かす創設の秘密

ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android 発売元 : NHK出版
ジャンル:ビジネス・社会・経済 購入元:eBookJapan
著者名:NHK報道局「自衛隊」取材班 価格:972円

※最新の価格はストアでご確認ください。

9・11テロ以降、国際社会の紛争にも後方支援として積極的に参加を始めた自衛隊。このたびの震災でも驚くほどの忍耐力を示し、国民の「自衛隊」に対する理解度、信頼度も極端に上がったのではないでしょうか。
  
率直な話、海外在住の私など日常会話では「自衛隊」という言葉はあまり使わず、「軍隊」と言ってしまったりすることがままあります。が、実はこの言葉こそ、私たちは細心の注意を払って使わなければならない定義なのです。

advertisement

外から見れば、自衛隊はまったく持って「軍隊」なのですが、平和憲法の存在する日本。これをどうして「自衛隊」としたのかを、もっと海外へアピールするべきだ、と読み終わって思いました。
  
詳細な資料、戦後混沌とした時代、かつ「戦争」「軍隊」という言葉に誰もが拒否反応を示していた時期に、いち早く将来の「海軍」の復興を目指そうとした集団、Y委員会。その中で交わされてきたのは、「軍隊」として定義せずに、いかに海軍力を行使できる存在にするかという難しい議論の数々。
  
アメリカ側の協力と思惑。天皇陛下のお言葉。海保(海上保安庁)との役割・定義の線引き…。国際社会においては、軍隊なしに国家は存在しえないと言っても過言ではありませんが、そんな中で旧海軍の軍人たちは、「過去の栄光を再び」というのではなく、真剣に国防を憂い、その準備を進めていたわけです。
  
原爆を落とされ、戦争を放棄することを心に決め、ある時期は「税金泥棒」とまで呼ばれた集団。国民の理解も低く、それでも「国防」を考えないことには、将来の日本国家は成り立たない…というジレンマの中での作業は困難を極めたのでしょう。当時の関係者の仕事ぶりも、そしてそれを綿密に追っていったNHK取材班の執念にも、脱帽です。
  
男性読者にはことにぐぐっとくる、スケールのでかさ! オトコの世界!
  
日本に住んでいると自衛隊は本当に影の存在で、一般人にとっては彼らがどこで何をしているのかまったくわかりませんが、その生い立ちや彼らの抱えるジレンマ、ミッション…そういったものに一度触れてみることは、非常に有益なのではないでしょうか。日本の自衛隊の持つジレンマは海外では理解されないものですが、それこそ日本特有の軍隊の歴史なのだと実感しました。

「給料が安くてもいいから名誉が欲しい」という自衛官も多いと

こういうジレンマのない海外の軍隊を、日本の自衛官たちはうらやましく思うのでしょう…

「戦ったことのない軍隊」。印象的なキーワードです

海幕幹部、さすがの潔さ

そのうちに自衛隊を軍隊と呼ぶ日が来るのでしょうか… (C)NHK/NHK出版