変装の天才にしてお茶目な怪盗ジバコの大活躍
更新日:2011/11/24
怪盗ジバコ
ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android | 発売元 : 文藝春秋 |
ジャンル:小説・エッセイ | 購入元:eBookJapan |
著者名:北杜夫 | 価格:473円 |
※最新の価格はストアでご確認ください。 |
この小説が出版された当時、ソ連の作家ボリス・パステルナークが書いた「ドクトル・ジバゴ」という小説がノーベル賞辞退という事件も絡んで話題となり、これを原作とした映画がちょうど大ヒットした直後です。つまり「怪盗ジバコ」はタイトルがすでにパロディなのです。
パロディといえばこの小説は、内容的には「怪盗ルパン」のパロディです。どんな人物にでも、見分けがつかないくらいそっくりに変装ができる。盗むものといったら、気の向いたものにしか興味を示さない。そのかわり気が向けば、普通の人にはなんの価値もないものだって莫大な費用と苦労をかけて盗んでみせる。紳士的な美意識をもって、弱い人や子供たちには救いの手をさしのべるというわけ。
それでなにが起きるかというと、ルパンものと同じことが起きるんです。つまり、主人公はそのキャラクターをたんたんと貫く、そのかわりに彼を取りまくまわりの人物たちがてんてこ舞いとドタバタと踏んだり蹴ったりの目にあわされる。とんまの真価を発揮させられる。
たとえばあの007なんかがジバコと対決する羽目になり、さんざんな目にあわされることになるのです。ボンドって名前を名乗るときに「ボンド、ジェームス・ボンド」って繰り返す癖がありますよね。それから飲み物は必ず「ドライ・マティーニ かきまぜないで、シェイカーで」ってかなり珍しい注文を出します。そういうこだわりの格好良さって実は格好悪さと紙一重じゃないですか。そんないかにもボンドらしい特徴が執拗に責められて本書の007はすっかり道化を演じさせられてしまうのですが、でもだからこそ笑いながらすっごく納得させられてしまうのです、アストンマーチンに乗るのはやめようとか。
本書が気持ちよいのは、フランス気質のルパンがしばしばイヤミですらあるのに比べ、ジバコはお茶目で可愛いので気軽にページがめくれていく点にあります。
なお、本書も映画の原作となっておりまして、67年東宝映画「クレイジーの怪盗ジバコ」。クレイジー・キャッツのヒット作です。お暇があればどうぞ。
謎の怪盗神出鬼没のジバコだ
子供が泣いているとなればご縁のことでも同情するジバコ
北杜夫本人までもジバコの手のひらで踊らされるありさま
もちろん名探偵明智小五郎も登場するぞ
小国の選手に変装しメキシコオリンピックにも出場
食指が動けば豚のオルガンなんてくだらないものまで盗む
007もかたなし (C)Morio Kita 2004