きっとマンガ編集者になりたくなる! 『バクマン。』より面白い平成の『まんが道』

更新日:2012/4/4

編集王 (1)

ハード : PC/iPhone/iPad/Android 発売元 : 小学館
ジャンル:コミック 購入元:eBookJapan
著者名:土田世紀 価格:432円

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『ブラックジャック』を読んで人が医師を志しがちなように、『編集王』を読んでマンガ編集者に憧れた方もきっと多いことと思います。本作の担当編集者・八巻和弘さんが以前にTwitterでこんなつぶやきをしていました。

“バキ担当の若い編集者から、編集王を読んで進路を決めました、と言って頂く。有難いし、気が引き締まる。”

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“連載が終わって13年になるが、実は今でも、時折そう言って頂く機会がある。自分でも読み返して、土田世紀氏と一緒に「編集王」を世に送り出した重さを感じる事がある。そして、この作品に対して、自分は恥ずかしい編集人生を送ってないかと、自問する事もよくある。”

現在はサイバラ先生の『西原理恵子の人生画力対決』(小学館)をご担当するなど、未だ話題作を連発し続ける八巻さん。私が尊敬して止まないマンガ編集者の1人ですが、『編集王』の主人公・カンパチは、そんな八巻さんをモデルにして描かれたと言われています。週刊マンガ誌の編集者見習いとして奮闘するカンパチの姿を通じて、マンガの在り方を問い続けた不朽の名作。それが『編集王』です。

印象的なエピソードはいくつもあるのですが、中でも単行本9~11巻、「明治クン」のお話が忘れられません。ある日カンパチたちが所属する「週刊シャウト」に異動してきた明治一郎、30歳。9~5時の勤務時間をきっちり守って残業はせず、作家の事情は無視して強引に締め切りを守らせ、しかし彼が担当する作品はいずれもアンケートでの人気は上昇。そして満を持して起こしたお色気ものの新連載『ぬかずヌルハチ』が社会問題化しながらも大ヒット! 作家の創造性とは、編集者の倫理とは、出版社のビジネスとは…『編集王』のテーマのすべてが、この「明治クン」編には詰まっています。

確かに『バクマン。』は面白い「マンガのマンガ」ですが、圧倒的な熱量はやはり『編集王』です。土田世紀先生がここぞという場面で描く見開きの大ゴマに痺れ、登場人物たちの熱いセリフに情熱を掻き立てられ、あなたもきっと、マンガ編集者となることを憧れずにはいられない筈です。

このエピソードの中心人物・明治クンと舎弟となった本占地。カンパチとその上司・青梅は明治への敵意を露わにし、宣戦布告します

新連載『ぬかずヌルハチ』に絶大な自信を抱く明治

そしてその狙いどおりに大ヒット! 雑誌は完売します

が、目立ちすぎたのが災いして、フェミニズム評論家から抗議されるはめに

評論家と明治の直接対決。明治の独特の正論に、評論家はたじたじとなります

挙げ句こんな行動に! 見開きの大ゴマは土田先生の真骨頂!

この一件が原因で社長に呼び出されますが、社長は「思い切りやれ」と

かつてまだ純粋だった本占地と苦楽をともにしたマンガ家に、本占地は引導を渡されます。自分はいまのままでいいのか、本占地は自問自答します

ついに政治家からの圧力が…。明治の運命の歯車が狂い始めます

物語は明治の過去をフラッシュバック。いじめられっ子だった明治の心の闇がこれでもかと描かれます (C)土田世紀/小学館