妖怪よりも人間の方がよほど不気味で醜い--そんなメッセージが伝わってくる

公開日:2011/9/4

劇画ヒットラー

ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android 発売元 : 水木プロダクション
ジャンル:コミック 購入元:eBookJapan
著者名:水木しげる 価格:324円

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「ゲゲゲの鬼太郎」以外の水木しげるの作品を読んでみたいとふと思い、3作品を選んで購入。そのうちのひとつがこれだ。
  
鬼太郎の漫画に出てくるキャラクターはみんな、不気味なりにどこか愛嬌があるのとは対照的に、この作品ではヒットラーやその取り巻きはとても気持ち悪く、醜く描かれている。ヒットラーの似顔絵とキャラクターの描き方に、作者のメッセージのすべてが込められているようだ。

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最初から最後まで、ひとかけらの救いもなかった。水木しげるは戦地で片腕を失っている。戦争の悲惨さを体験しているだけに、それを読者に伝えたい気持ちが強いのだろう。
  
ひとりの男の狂気に大勢の人間が引きずられて、ヨーロッパはめちゃめちゃになり、ユダヤ人は600万人以上も殺害された。戦争体験もなく、日々命の危険にさらされる心配もなく過ごしていると、そんなことがつい数十年前にあったなんて信じられなくなる。
  
ニューヨークの友達の中には、両親が東欧諸国から逃れてきた、というユダヤ人も多い。そんなこともあって、時折こういうことを思い出すことも必要なんじゃないかなあ、とどこかで思っているので、読後に不快になることを覚悟でこんな作品を読んでみたりするのだ。

すべてのヒットラーの描写に狂気と救いのなさが感じられる

巧みな演説で国民を狂気に巻き込んでいった

これが、ヒットラーがドイツ国民に贈った「千年帝国」だった (C)水木プロダクション