「生きているという、ただそれだけのことがむちゃくちゃうれしかった」という言葉を噛みしめたい

公開日:2011/9/4

昭和史 (1) 関東大震災〜満州事変

ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android 発売元 : 水木プロダクション
ジャンル:コミック 購入元:eBookJapan
著者名:水木しげる 価格:324円

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戦争とは無縁で生きてきたような気がしているが、水木しげるが描く「昭和史」を読むと、自分が生きていた昭和という時代は、半分が戦争に塗りつぶされていた時代だったことを改めて感じる。
  
私は学生時代は世界史が苦手だった。自分と接点がない出来事はピンと来ないので頭に入らないし、入ったところですぐに抜けていくのだ。でも、このコミックでは、昭和の出来事と、水木しげる自身の生活を中心として一般庶民の暮らしぶりが並行して描かれているので、歴史が自分の生活と地続きに感じられて、興味を持って読み通せた。

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水木しげるは太平洋戦争でラバウルに送られる。コミカルに描かれているので、いやにならずに読めるが、そこに描かれている、本人が体験した現実は、戦争体験のない私たちには想像もつかないようなことばかり。
  
空腹で木の根っこやカタツムリを食べる。マラリアにかかった上に負傷して、目医者に腕を切断され、傷口にはウジがわく。古兵にいじめられ、毎日のようにビンタを食らう。仲間が死んでいくのを数限りなく目にする。
  
そんな過酷な数年間を経て、ようやく終戦になって日本に戻ってきたとき、「生きているという、ただそれだけのことがむちゃくちゃうれしかった」と書いている。その言葉から、戦争で犠牲になった人たちや自分がくぐり抜けてきた地獄のような体験を無駄にするな、というメッセージがびんびんと伝わってくる。
  
また、水木しげるが妖怪に興味を持つに至ったエピソードや、妖怪に寄せる想い(?)がところどころに描かれているが、それもとても興味深い。

社会的な大きな事件やできごとと、水木家周辺の日常的なできごとが並行して描かれていく

軍隊の階級や編成についての説明。大尉より少佐の方が上で、少将はさらにその上。う~ん、軍隊に興味なんかないので知らんかった

れから青春を謳歌しようというときに戦争が始まり、死を意識せざるを得なくなり、宗教書や哲学書を読みあさったというエピソードが語られる

マラリアと負傷で腕を切断される羽目に。しかも傷口にはウジがわく

8巻の最後で、水木しげるが全身全霊を込めて訴える。戦争を体験した者たちの犠牲を無駄にするなと (C)水木プロダクション