自分だけに「見える」のは、担任だから? それとも…女教師をめぐるホラー・サスペンス

小説・エッセイ

更新日:2012/3/2

担任

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : KADOKAWA
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:電子文庫パブリ
著者名:新津きよみ 価格:583円

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行方不明になった女の子をめぐる、女教師が主人公の学校ホラーです。

昨年見た映画「告白」(原作:湊かなえ)で、松たか子さん熱演の教師役に圧倒されました。あれから、学校を舞台にした生々しい話を他にも読んでみたいなぁ…と思い、見つけたのがこの新津きよみ『担任』。

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タイトルからして、そのまんま学校ですね。わくわく。

あらすじ:37歳独身女性の直子は、臨時採用された小学校教員。担任したクラスでは、1年以上も行方不明になっている生徒・明日香が在籍していた。空席なはずの明日香の座席には、いつしか白い影の少女が座るように。自分にしか見えないこの影は、明日香の幽霊では? 影に導かれて、直子は行方不明事件の手がかりを追いはじめる。

主人公の直子先生が探偵役になって、事件自体はサスペンス風のオチで終わるのですが、最後の最後、ラストの3行で「実は」となるキーワードが。あれ? と思い伏線を全て確認すると、物語全体のホラーな真相が浮かび上がってきます。伏線回収作業を自分でやりたい方、最後にぎょっとしたい方、宮部みゆきあたりが好きな方におすすめ。

ホラーの種類としては、バイオハザードのような肉弾戦の怖さではなく、「得体の知れないものが自分にしか見えない、静止していたものが段々動き出す」という、和製ホラーの静かな怖さ。特に、直子先生の教師としての面・中絶経験のある元客室乗務員としての面・母親を介護する娘としての面をそれぞれリアルに描くことで、「怪奇現象に精神を追い詰められていくと、現実の生活が崩壊し始める」という恐ろしさがひしひしと伝わってきました。自分の身にこんなことが起こったらどうしよう…と思わされます。

こういうしんみりとしたホラーを読み終えた明け方に、玄関のほうからガタッ! と新聞が配達される音が聞こえると心臓がひっくり返るんですってば新聞屋さぁん! ううう。

プロローグ、インターバル、エピローグをつなげて読むと物語の真相が明らかに